PFM モードで動作する DC/DC コンバータ Part 1/3

 多くの DC/DC コンバータは一定のスイッチング周波数による PWM で動作しています。高負荷状態では高効率で動作しますが、軽負荷領域ではスイッチングによる固定損失で効率が低下してしまいます。近年、電池駆動機器だけではなく AC 電源で動作する製品でも待機時消費電力の軽減のために軽負荷効率の高い電源が要求されており、軽軽負荷でも高効率を維持できるパルス周波数変調(PFM)制御による電源の需要が高まっています。PFM 動作の制御方式とその特徴、使用時の注意点について 3 回にわたり解説します。第 1 回目は 「PWM 制御と PFM 制御の違い」です。

軽負荷でも高効率なPFMモード
pwr_sel_hint30_3.bmp  PWM 制御方式の DC/DC コンバータは機器が動作している時の中~高負荷時の効率は良いのですが、待機時などで動作が停止して軽負荷状態となると、負荷電流の減少で I2R による抵抗損はどんどん減少してゆきますが、一定の周波数でスイッチングを継続しているのでスイッチングによる損失は一定値のまま残ります。軽負荷状態では抵抗損は無視できるほど小さくなるので、自己消費電流による損失とスイッチング損失による一定の損失が発生している状態となります。 効率=出力電力÷(出力電力+(スイッチング損失+自己消費電力)) となり、出力電力が固定損失分と比較して少なくなるにつれ効率が急激に低下してしまいます。
 スイッチング損失はスイッチング周波数に比例します。負荷電流が少ないという事は定格負荷と同じ回数スイッチングを行なってエネルギー供給動作を行なわなくても出力電圧を維持する事が可能となります。そこでできるだけ自己消費電流の少ない回路とし、中~重負荷時には固定スイッチング周波数による PWM 制御で動作させ、軽負荷状態になると負荷電流に応じてスイッチングの回数を減少させるパルス・周波数変調(PFM)制御に移行する事により軽負荷時の効率の低下を防止し、広い電流範囲にわたって高い効率を維持できる電源回路を作る事が可能となります。

PWM 動作時と PFM 動作時の違い

・スイッチング周波数が負荷電流により変動する
 軽負荷時の効率低下を防ぐ為にスイッチング周波数を低下させる必要が有りますが、スイッチング周波数が低下するという事が問題となる場合があります。PWM 動作時は固定スイッチング周波数なので発生するスイッチング・ノイズの周波数成分は例えば 500kHz スイッチングではノイズの基本波も 500kHz なのでノイズの問題が有った場合は特定周波数のフィルタリングで対策する事になります。しかし PFM 動作時にはスイッチング周波数(1/動作周期)は負荷電流に比例しますので周波数が数 kHz まで低下する事もあります。スイッチングによるノイズの周波数も低下するのでノイズ周波数は高負荷時の 500kHz から軽負荷時の数kHzまで電流値に依存して変化するので対策が困難となる場合があります。特にスイッチング周波数が 20kHz 以下になると可聴周波数領域に入るのでスイッチングパルス電流・電圧によりインダクタやセラミックコンデンサで物理的な振動による鳴きが発生し、音響的なノイズが発生する事もあります。

・PWM の時よりリップル電圧は大きい pwr_sel_hint30_2.bmp
 スイッチングが停止している間は出力コンデンサからの電荷放電だけとなり出力電圧は直線的に低下します。次回のスイッチングにより電荷を出力コンデンサに充電して電圧を上昇、復帰させます。この結果出力コンデンサの電圧は短時間の充電による電圧上昇と放電による電圧降下による大きな電圧変動が発生し、これがリップル電圧となってしまいます。負荷電流が変化してもスイッチングの周期が変化するだけでリップル電圧には大きな影響はありません。スイッチングの回数を下げようと思うと 1 回のスイッチングでできるだけ多くのエネルギーを送り込み長くスイッチングを停止させた方が高効率のためには良いのですがこの結果 PWM 動作時の出力電圧の変動(リップル電圧)よりも大きな電圧変動が発生します。この電圧変動を小さくするには 1 回のエネルギー量を小さくすれば電圧変動は小さくなりますが、1 回あたりのエネルギーが小さいので保持時間が短くなるのでスイッチングの周期が短くなり、周波数が上昇して効率が低下してしまいます。同じ負荷電流の時、発生するリップル電圧とスイッチング周波数を下げようとするとその分スイッチング周期が短くなり周波数が上がってしまうので効率が低下してしまいます。リップル電圧の大きさと高効率は相反する条件となり、両立できませんので目的に応じて選択する事になります。

・平均電圧は少し高くなる場合が多い
 PFM 動作時のリップル電圧は PWM 動作より大きくなりますが、ほとんどの場合、最低電圧を確保するためにボトム電圧は余り変えずにピーク電圧を高くする方向に制御します。この結果出力電圧の平均値は少し高い電圧となります。+側の誤差余裕は少なくなりますので、電圧の設定値に注意する必要があります。

・負荷過渡応答は遅いので待機状態からの回路起動時には要注意
pwr_sel_hint30_1.bmp 回路起動により負荷電流が軽負荷状態から高速に増加した時に PFM 動作での供給電流能力には限界があるので、動作モードを高速に PWM モードに移行させて負荷電流の増加に追従動作させる必要があります。しかし動作時の消費電力を最小とするために、PFM 動作時に PWM 制御の回路ブロックへの電源供給を停止している製品では PWM 制御回路ブロックの起動に時間がかかる場合があります。常時起動型の製品でも PFM 動作時に出力電圧が設定より少し高い電圧で動作している結果、エラーアンプの出力がマイナス側へ目一杯の電圧になっていて PWM パルス幅は 0 になっています。PWM 動作に移行してからパルス幅を広げるまでの時間が PWM で動作している時よりも余分に必要となり応答時間が増加します。これらの結果電流の増加が遅れ、出力電圧が大幅に低下し、電圧低下による起動不全に陥る場合があります。スタンバイ時から起動するときの過渡応答能力に注意する必要があります。
 PFM→PWM への移行時の電圧のアンダーシュートの発生の問題を軽減する為に PFM 動作時に出力電圧を 1% 程度高めに変更する電圧ポジショニング機能を持った製品があります。PFM 動作時には平均電圧は高めになっていますがボトムの電圧を 1% 程高い電圧で制御する事によりアンダーシュート発生時のボトム電圧も 1% 高くなるので低電圧による起動不全が発生する可能性を軽減する事ができます。 

(Part 2/3 に続く)

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