DC/DC コンバータの効率と損失を測定する時の注意点 Part 3/4

DC/DC コンバータの入力コンデンサ容量が不足していると、通常負荷電流時でもスイッチング周波数での大きな高速電流変動が発生して電流測定誤差を発生しますが、省エネ運転に対応した軽負荷モードを持つ電源の場合、軽負荷運転時の効率を測定するには測定方法に特に注意しないと、更に大きな測定誤差が発生する事があります。

軽負荷動作時の DC/DC コンバータの効率測定
軽負荷時の効率を向上させる為の PFM モードですが、軽負荷時の効率を正確に測定するのは困難です。これは軽負荷時の平均出力電流は数mA 未満の以下低い電流レベルですが、電源IC はこの電流を連続して流すのではなく、大きな電流を短時間だけ流して停止を繰り返す間欠運転を行い、平均電流で小さな電流を供給しています。
図 6 PFM 動作時の入力電圧・電流波形 (TPS62260)
TPS62260 では入力電流は図 6 右下の様にスイッチング動作時にはピークで 300mA 程度の電流が 1usec 以下の間に瞬間的に流れ、スイッチング停止持には IC の無負荷時自己消費電流である 15μA 程度の電流まで低下する間欠状態で電流が流れます。負荷電流に応じてこのパルス電流の間隔が制御される結果スイッチング周波数がほぼ負荷電流に比例した周波数となり、Pulse Frequency Modulation (PFM) 制御と呼ばれます。負荷電流が 10mA の時には入力電流はリップルのある連続電流となりますが、1mAの場合、入力電流は間欠電流となります。パルス状の300mAの入力電流は入力コンデンサにより平滑されますが、評価基板で使用されている 10μF のセラコンによる平滑により、ピークで図 6 左下のように 5mA 程度の変動電流となりますが、直流電流になっている訳ではありません。この電流と入力ラインのインピーダンスにより、入力電圧がピークで 20mV 程度低下していますが、それ以外のほとんどの時間、15μA 程度まで電流が減少するので電圧低下は殆どなくなり、測定される入力電圧はほぼこの電圧となりますが、DC/DC コンバータがスイッチングにより、エネルギーを取り込んでいる時の電圧は電圧が低下している状態の時なので、正しい入力電力は無負荷状態の高い電圧×入力電流による入力電力ではなく、低下している電圧×入力電流の積値を時間積分する事により正しい入力電力が求められるという事になります。

図 7 PFM 動作時の入力コンデンサの容量と入力電流・電圧

ただしこの評価基板での測定では入力電圧 3.6V に対して電圧低下はピークでも 10mV 程度なので、最悪値でも 10/3600=0.3% しかないので誤差として無視してしまっても大きな影響はありません。しかし前回のレポートの様に入力コンデンサの容量が規定値より少ない場合は、このパルス電流が十分に平滑されないので大きな影響が出る事になります。 図 7 左は入力コンデンサを 2.2μF と 1/5 まで減少した時、右は入力コンデンサを 32μF (10+22) まで増加させた時の入力電圧・電流波形です。入力コンデンサが 2.2μF と少ないと電流のピーク値は 10mA まで、電圧降下は 50mV まで増加しています。ピークでは 1.4% の電圧降下となっていますので無視できないレベルの誤差が発生しています。測定する電源の PFM 動作の方式、使用する供給電源のインピーダンスや電流計の影響でこの誤差は更に大きな値となる可能性があります。また、この測定では低耐圧の降圧コンバータを使用し、入力電圧も 3.6V と低いのでセラミックコンデンサの DC バイアス特性の影響はさほどではありませんが、高入力電圧の降圧コンバータの場合で入力電圧が 10V を超えるような高電圧からの降圧の場合は、入力コンデンサの実容量がカタログ表記容量の 数分の1 しかない場合がありますので、それなりの容量を付けたつもりでも実際には図 7 左の状態になっている場合が有りますので注意が必要です。容量を増加させると電圧・電流のリップルは更に減少し、より直流電圧・電流となりますのでより高精度な測定が可能となります。

出来るだけ正確な効率の測定方法
入力にコンデンサを追加接続して、間欠運転により発生するリップル電流を平滑化して供給電流を直流化して測定する事により測定器や電源ラインのインピーダンスの影響で発生する過渡的な電圧変動による電圧測定誤差を小さくすることができます。効率を測定する時には常に入力コンデンサの追加を行ってから測定する事により、測定誤差を最小とする事ができます。大容量のコンデンサと言っても POS-CAP や OS-CON は電解コンデンサに比べると高周波特製が良いとは言ってもせいぜい 500kHz 以下でしか使用できません。PFM 動作ではスイッチング周波数のインターバルが広がる事によりスイッチング周波数が低下していますが、各々のパルスは 1μS 未満で動作が完結しているので、このパルス電流を平滑するには 1MH 以上の特性を持ったコンデンサを使用する必要があります。図 8 のように 22μF 以下の様々な容量のセラコンをできるだけ多くの数、並列接続して入力フィルタを構成します。
図 8 効率測定時には入力コンデンサを追加して測定する

更なるパルス駆動型の電源
近年、家電製品の待機電力をできるだけ 0W にしようという省エネへの追求から、この PFM 制御という間欠運転制御が AC-DC の電源にまで及んでいます。低消費のマイコンではリチウムコイン電池だけで 1 年間動作できるような製品もありますので待機時動作電力は μW の領域まで低減できますが、AC-D Cのスイッチング電源は無負荷でも 数百mW の電力を消費しています。そこで、マイコンが数秒間から数分間動作を継続する事が出来る大容量のコンデンサを設け AC-DC の動作をリモートで停止させる事により、コンデンサの電荷で動作している間の AC-D Cの消費電量を 0 にする事ができます。マイコンはコンデンサの電荷が減少すると AC-DC を再起動させて電荷を補充します。こうなると、電源回路への入力電流は数秒から数分に 1 回、パルス状に大電流が流れ、インターバルの間はリーク電流程度しか流れないという事になり平均電力を大幅に減少させる事が出来ます。この状態での効率測定は前述のコンデンサによる平均化では測定できないので、停止時の微小電力を高精度に測定、スイッチング動作時はパルス状の大電流を高速高精度に測定して電力計測を行い、動作割合で平均効率を算出する必要が出てきますので高速の AD コンバータを搭載した PC を使用した計測システムによる長周期での測定システムが必要となります。

(Part 4/4 に続く

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