1 - ポータブル機器向け 超小型電源

ポータブル機器では、内部回路が必要とする電源の種類が多様化しているため、電池という単一の電源から何種類もの電圧を効率良く作り出さなければなりません。そのためのキーワードは超小型と高効率です。


電源は超小型・高効率が必須

携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコン用の通信カードといった携帯機器では、搭載される電源の数が増え続けています。例えば、携帯電話では 1 セルのリチウム・イオン電池だけがパワーの源ですが、回路側では CPU、メモリ、ディスプレイなどの各部分で電圧など必要とする電源仕様が異なりますしブロック毎に別電源にし、使用していないブロックを細かく電源制御して省エネ動作をします。このため、携帯電話で 30 チャネル、デジタルカメラでも 8 チャネルを超える電源が必要とされます。

携帯機器は電池駆動であることから、小型化に加えて、低消費電力も重要です。したがって電源回路でのエネルギー変換効率を高くしなければなりません。この為、低効率なシリーズレギュレータから、高効率なスイッチング電源に代わろうとしており、さらに回路電圧の低下に伴いスイッチングの回路方式も低電圧出力時でも効率の良い同期整流型に移行しています。

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3MHz の高速スイッチング

図2:TPS62300の変換効率は最高93%!図1:3MHzスイッチングで500mA出力の電源を省スペース実装スイッチング電源を小型化するには、スイッチング周波数を高くするのが第一です。電源回路ではインダクタと入出力のコンデンサが大きなスペースを占めますが、動作周波数が高いほどこれらのサイズを小さくできます。テキサス・インスツルメンツ(以下TI)では、携帯機器用に 1 MHz から 3 MHz の高速スイッチングを実現した電源IC 製品を提供しています。図1 は 3 MHz スイッチングの降圧電源(TPS62300)の実装例ですが、約 5 mm 角の範囲に全てが実装できています。電源IC のサイズはわずか 1 × 2 mm(8 ピンの CSP)で、入出力のコンデンサには 0603 サイズの積層セラミックコンデンサ(4.7 μF)が使えます。高さの面でも TPS62300 自身の高さ(ハンダボールを含む)は 0.625 mm 以下であり、全体でも高さ 1 mm 以下で最大出力 500 mA の DC/DC コンバータを構成できます。なお、1.5 V や 1.8 V などの固定出力電圧製品の場合は外付け抵抗が不要となり、より小さく実装できます。
3 MHz の周期は 333 ns ですが、同品では最小オン時間が 35 ns なので最小 ON デューティが約 10 %で動作可能です。これは入力電圧が最大定格の 6 V であっても最小出力電圧の 0.6 V の出力が可能であり、入出力の電圧の組み合わせに制限が無い事を意味しています。

さらに、TPS62300 自身の変換効率は図2 に示すように最高 93 %に達します。また、負荷電流が少ない場合は、間欠的に動作して高効率を維持するパワーセーブモードを備えています。無負荷時の自己消費電流は85 μAとわずかで 1 mA 未満でも高い効率を示します。なお、2.25 MHz 動作の TPS62290 では無負荷時自己消費電流は 15 μAを達成しており、さらに軽負荷まで高効率となります。

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FET 内蔵

図3:同期整流昇圧コンバータと寄生ダイオードスイッチング電源ではスイッチとなる FET もスペースを占めます。このため、TI は携帯機器用電源IC では FET を IC 内に取り込みました。シリコンの面積当たりのコストは IC の方が外部FET より高いので、チップサイズが大きくなり価格は高くなりますが、実装コストと面積は小さくなるという利点が有ります。さらに、外付けの FET の場合,配線による浮遊容量と寄生インダクタンスが増すため、3 MHz といった高い周波数で FET を駆動する事により発生する問題が解消され、安定した動作が可能となります。 同社ではさらに、IC の微細プロセスを FET 部分にも応用することで、内蔵 FET でしかできない機能を追加して高機能な制御を行っています。

図3 は昇圧コンバータの例ですが、通常 FET は寄生ダイオードを持っています。この結果、例えば負荷が短絡すると寄生ダイオードが導通して大きな電流が流れ、回路が破壊される危険があります。これに対してTIの製品では、シャットダウン時には寄生ダイオードがオフするようにFETのバックゲートの電圧を制御しています。これは、FET 内蔵でなければできない技です。

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高性能と高信頼を生み出す回路の工夫

図4:従来の出力電圧のフィードバック携帯機器用超小型電源では、回路面でも様々な工夫を施すことが必要です。例えば、図4 は出力電圧の帰還回路部分を示したものです。図で出力電圧を変えるには R1 と R2 の比を変更するのが一般的です。図1 の実装写真で示した 2 本の抵抗がこれに相当すると考えがちですが、TPS62300 では R1 と R2 に相当する抵抗は内部で固定されています。図1の 2 本の抵抗は、リファレンス電圧(図4 の Vref)を設定するための抵抗です。理由は幾つかありますが、こうすることで、出力電圧設定を変えても帰還定数が変わらなくなるため、回路が安定して動作することがあげられます。出力の負帰還は出力電圧制御から過度応答時の制御にも使われる、広い周波数範囲での位相補償が必要になるからです。TI ではさらに、誤差アンプを 2 つのルートに分ける多重帰還を採用し、直流(低周波)領域,高速応答(高周波)領域双方に対して最適な帰還がかかるように工夫しています。また、直流であるリファレンス側を制御するようにしたことで、DAC など外部からの出力電圧制御が容易になるというメリットも得られます。

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携帯機器向け高性能電源IC

製品情報

TPS62300

3 MHz 500 mA チップスケール同期整流降圧コンバータ
  • パッケージ:8 ピン 1 × 2 mm CSP、10ピン 3 × 3 mm QFN
  • 3 MHz 動作で最高 93 %の変換効率
  • PWM 時出力電圧精度:-0.5 % 〜 1.3 %
  • 入力電圧:2.7 V 〜 6.0 V
製品情報

TPS62290

2.25 MHz 1 A 同期整流降圧コンバータ
  • パッケージ:6 ピン 2 × 2 mm SON
  • 入力電圧:2.3 V 〜 6.0 V
  • 2.25 MHz 固定周波数動作
  • PWM 時出力電圧精度:±1.5 %
  • 最大出力電流 1000 mA (Vin = 2.7 V 以上) 同期整流 FET 内蔵
  • PFM/PWM 自動切換えまたは PWM 固定を切り替え可能