図:面実装時代の熱設計 その 1

3 面実装時代の熱設計 [1] - 放熱の基本と熱抵抗モデル

物質の熱伝導率放熱の基本と熱抵抗モデル部品が小型化し高密度実装が進むに従い、半導体から発生する熱を基板に逃がすことが多くなりました。その場合、放熱器としてのプリント基板をどのように考えればよいのか。材料の持つ基本的な性質と熱抵抗モデルを通じて考察します。


熱の移動

式1物体は常に熱的に平衡するように働くので、物体内部で発生した熱は、高温部から低温部へと様々な経路を通って移動し、高温部の温度は低下します。熱の移動には伝導、対流、放射の 3 つの形態がありますが、基板上の半導体などで発生した熱は、まず基板や部品の内部を伝導によって移動し、次に物体の表面から対流と放射によって外部に拡散してゆきます。

伝導は物質中を熱エネルギーが分子の振動として伝播していく状態で、物質の材質により伝播能力は大きく異なります。熱を伝える能力は物質毎に決まった値を持ち、熱伝導率(K:[W/cm℃])で規定されます。物体の持つ熱抵抗はその物体の長さ、幅、厚さと熱伝導率から式 1 で計算することができます。機器で発生した熱はまず、基板や部品の物質内を伝導により拡散します。

対流は物質の表面から周辺空間への熱の拡散です。物質の表面近くの空気が加熱され物体の表面から熱を奪います。この時、物質の表面から伝播される熱量は伝導と異なり、物質の材質には全く関係せず、単位面積と温度差に比例した一定の値となります。例えば、基板の発熱量と周囲温度が一定であれば、基板から放熱できる熱量は基板の表面積に比例します。同じ表面積の場合では発生する熱量が大きいほど物体の温度は上昇し、同じ発熱量の場合は物体の表面積が大きいほど温度上昇は少なくなります。対流による物体表面の温度上昇は式 2 で計算されます。

式2

式2

静止空気の場合の放熱量は計算により求められますが、強制空冷の場合は流量・流速により大きく変化するので計算は困難となります。実際には、風速が 0.5 m/秒のとき、対流熱伝導率(h)は無風時の約 2 倍になります。

放射は物質の温度エネルギーが直接外部の空間へ赤外線などの電磁波として放出される熱エネルギーの拡散です。放射エネルギーは物質の表面状態などにも大きく左右されるので正確に計算するのは大変ですが、簡易的には対流によるエネルギーの拡散のおおよそ半分程度の量が放射により拡散されるとみなせます。熱設計を行う場合は、放射による放熱を計算に入れずに設計を行い、放射による放熱分をマージンとして確保しておくことで、設計を簡略化できます。

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熱抵抗

図1:熱抵抗と電気回路電子機器や基板では、熱抵抗と熱流を抵抗と定電流源に置き換えた電気回路モデルを用いた熱設計が広く行われています。熱抵抗は、物体に 1 W の電力に相当する熱量をあたえた場合に温度が何度上がるかを示した量で、単位は[℃ / W]です。物体の熱伝導度を示す量であって熱抵抗が小さいほど熱をよく伝え、発生する温度差を少なくすることができます。

熱抵抗とデバイスの電力損失と温度上昇の関係は 温度上昇=熱抵抗×電力損失 となります。これはオームの法則 圧降下=電気抵抗×回路電流 と同じ関係にあるので、発熱と放熱の様子を電気回路に置き換えて考えることができるわけです。さらに、図 1 に示したような半導体の発熱部(ジャンクション)→ケース→ヒートシンク→周囲温度という一連の放熱ルートでは各々の熱抵抗の直列接続と考えることができます。

あえて一つだけ注意点を挙げるとすれば、熱抵抗モデルにおける基準温度は、0 ℃ではなく周囲温度だということです。例えば、熱抵抗×電力損失で温度上昇が 50 ℃と計算された場合、周囲温度が 40 ℃ならばジャンクションの温度は 90 ℃になります。回路図で言えばグラウンドが周囲温度に相当する電圧だけ浮いていることに相当します。

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基板材(エポキシ)と銅箔の熱伝導

電気抵抗が物体の大きさと形状や、その材料が持つ導電率で決定されるのと同様に、熱抵抗も物体の形状と物質の持つ熱伝導率に依存します。

ディスクリート部品や DIP の IC を搭載していた時代には IC のパッケージは大きな表面積を持っていたために IC 本体からの対流と放射による放熱によりある程度の許容損失を持っていました。しかしながら、昨今ではパッケージが小型化し、数 mm 角で高さも 1 mm 程度のパッケージでは IC 本体から直接空間へ放熱する能力は殆ど無くなっているため、発生した熱は IC を実装した基板に逃がすデザインへと変更されています。こうしたことから、放熱器として利用するプリント基板材料の熱伝導度や形状と放熱性の関係について検討することが基板設計において重要な項目になってきています。

図2 物質の熱伝導率
物質名 熱伝導率1 (W/mK)
403
アルミニウム 236
エポキシ(FR4) 0.25
ハンダ 39
空気 0.024

図2 に基板周りで使われる主な物質の熱伝導率を掲げます。銅やアルミなど金属の熱伝導率は圧倒的に大きく、熱が伝わりやすいことを示しています。それに比べ、基板材料のエポキシや空気は 3 桁から 4 桁も低い値です。同じ形状で比較した場合、エポキシは銅に比べて遥かに熱を伝えにくい物質であると言えます。

図3 は、プリント基板の形状を考慮した物体の熱抵抗を示したものです。まず、基板面に沿って横方向に熱を逃がす場合で比べると、35 ミクロンの銅箔パターンの方が 1.5 mm の基板材(FR4)よりも 30 倍以上も熱伝導性が良いことを示しています。横方向には銅箔のパターンで熱が伝導されており FR4 は殆ど寄与していないことになります。

物質の熱伝導率
物質名 条件 熱抵抗 (℃/W)
横方向(図A)
t = 0.035 mm
79
厚さ方向(図B)
t = 0.035 mm
2.54 cm²
0.00015
ピア 1 個(図C) 100
エキポシ
(FR4)
横方向(図A)
t = 1.5 mm
2600
厚さ方向(図B)
t = 1.5 mm
2.54 cm²
9.3

これに対して基板の厚み方向では、銅箔の熱抵抗は無いに等しく 0 とみなせますので、銅の厚さによる熱抵抗の変化は無視できます。FR4 でも面積による効果で 1 インチ角で 9.3 ℃/W となり、放熱に寄与できることを示しています。FR4 の場合は厚さの影響は大きく、1.5 mm 厚でこの値ですので、多層の薄型基板では銅層の割合が増えて FR4 の合計厚は薄くなるので、熱抵抗はさらに小さくなります。つまり、厚み方向の基板表面から裏面への熱拡散に対してはFR4 基板を通した放熱ルートを考えて良いということになります。

図3 では放熱のために設けるサーマルビアも計算してあります。ビア 1 個分の銅では 100 ℃/W と高い熱抵抗を示しますが、複数のビアを使用することにより並列化され熱抵抗を下げられます。例えば 10 個あければ熱抵抗は 1/10 の 10 ℃/W になるので、約 1 平方インチの基板面に相当する熱伝導を確保できます。IC の放熱パッドの直下に配置すれば IC で発生した熱を基板内に効率よく拡散させることができます。

面実装時代の熱設計 [2] に続く)

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