図:面実装時代の熱設計 その 2

4 - 面実装時代の熱設計 [2] - 放熱の基本と熱抵抗モデル

部品が小型化し高密度実装が進むに従い、半導体から発生する熱を基板に逃がすことが多くなりました。その場合、放熱器としてのプリント基板をどのように考えればよいのか。材料の持つ基本的な性質と熱抵抗モデルを通じて考察します。


基板から空間への対流による放熱

式2:基板から空間への対流による放熱電源回路設計手法 3 で、対流による放熱は物質材料には無関係に温度差と表面積で決まることを述べました(式2)。したがって基板から空間へ放熱する際の表面温度は基板面積と電力損失そして環境温度から求めることができます。

例えば、面積が 10 平方センチで熱量 1W のとき、温度差は 83.3 ℃となり、環境温度を 25 ℃としても基板温度は 100 ℃を超えます。したがって 10 平方センチの小さな基板では 1W の熱損失を放熱できないことがわかります。

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プリント基板の熱モデル

図1:熱抵抗と電気回路 基板の横方向や厚み方向に熱を逃がすことを考えると、前回 図1 に示したような 1 本の直列回路で置き換えるには無理がでてきます。横方向と厚み方向の放熱ルートを考えなければならないからです。しかも、横方向に逃げた熱はその先で厚み方向にも拡散します。ビアがある場合はそれも考慮しなければなりません。従って基板からの放熱ではラダー構造の熱抵抗アレイのモデルを作り、これを数式化して解く必要があります。

まずは単純な熱モデルを考えてみます。点熱源の場合、熱は熱源を中心に同心円状に拡散してゆくので、図4 に示すような熱源を中心とした円形の基板を使用します。基板は両面基板とし、中心に 9 つのビアを配置した半径 1 インチ(25.4 mm)の基板と半径 2 インチ(50.8 mm)の 2 つのモデルの間で比較を試みます。基板は円形ですから中心から同距離のリングでの温度は同じになります。

中心から 1/10 インチ(2.54 mm)幅に同心円を想定し、各リングからリングへと熱が伝播され、リング内では表面と裏面との間で熱が伝播されるモデルを考えます。

図4:熱モデルを設計するのに使用する円形の基板

中心に配置されたビアの上には 3W の発熱量を持った熱源が半田付けした状態で置かれているものとします。図5 の下側の絵に示すように各リング間の水平方向の熱の移動は表面と裏面の銅箔の熱抵抗で決まり、外周に行くほど円周が長くなり、リング間の熱抵抗は低下してゆきます。一方、表面から裏面への熱の移動は FR4 の熱抵抗で決まりますが、FR4 の熱抵抗も外周に行くほどリングの面積が大きくなるので熱抵抗は低下します。各リングの上面と下面からの対流による熱拡散は各リングの面積に比例しますのでやはり外周に行くほど熱抵抗は低下してゆきます。各々の部分の熱抵抗を抵抗値に置き換えた抵抗ラダーによる熱モデルは 図6 のようになります。

図5:抵抗ラダーによる熱モデル

図6この抵抗ラダーによる電気回路を回路シミュレーターに入力することにより各部位の温度が電圧として求めることができます。

図6 に示した二つのグラフは、その結果の例です。半径が 1 インチと 2 インチの両面基板に直径 0.3mm の 9 個のビアを設け、3W の熱源を取り付けた場合の温度プロファイルを示しています。図6(a)は 35μm の両面銅、厚さ 1.5mm の FR4、図6(b)が 70μm の両面銅、厚さ 0.75mm の FR4、の場合です。

二つのグラフはいくつかの結論を暗示しています。まず第一は、2 つのグラフ共に基板温度に一番大きな影響を及ぼしているのは基板の大きさであるという事実です。両者とも 1 インチより 2 インチの方が基板全域で温度上昇が少なくなっています。熱源から離れたエッジ部分の温度は銅箔が厚く基板の熱抵抗が低い方が温度が下がるように思われますが、基板の材質によらずにほぼ同じ温度となっており、基板の大きさがその基板のベースとなる温度を決定していることがわかります。半径 2 インチの基板の周辺部分は面積が広いために熱抵抗が低くなり、温度変化は非常に小さくなっていますがこの部分からの対流放熱の影響は大きいと言うことになります。熱源に近い部分は温度上昇のレートは基板の直径にかかわらず同程度となりますが、ベース温度が異なっているために基板サイズの違いが中心での温度差に大きく反映されています。基板が小さいと温度上昇は大きくなり、中心部(IC)の温度を下げるためにはある程度の基板面積が必要であるということになります。

次に、二つのグラフから同じ直径同士を比べてみると、熱源に近い部分での温度が 40 ℃近く異なっています。銅箔が厚い方が温度上昇は少なくなっており、FR4 が薄いほうが表面と裏面の温度差は少なくなっています。同じ直径の基板では銅箔厚にかかわらずベースラインの温度は同じになりますが、基板の熱抵抗を下げることにより中心部の温度を大きく下げることが可能なことがわかります。35μm の銅で直径 2 インチの基板の中心温度と 70μm の銅で直径 1 インチの基板の中心温度を見ると、ほぼ同じ温度となっています。基板面積が小さいと基板全体の温度が上昇してしまいますが、基板の熱抵抗を下げることができれば基板内での温度差が少なくなり中心部にある IC の温度上昇を抑えることができます。

とはいえ、基板に搭載する他の部品の信頼性は温度の影響を大きく受けるため、基板全体の温度上昇を抑えたいことも多いでしょう。その場合は、基板の熱抵抗を下げても効果は無いので、基板面積を広くしてベース温度を低下させなければなりません。

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まとめ

  • 熱設計は熱抵抗を電気抵抗に置き換えたラダー抵抗によるモデリングで近似できます。
  • 放射による放熱を計算に入れないことで充分なマージンを持った設計とすることができます。
  • 基板の熱抵抗を下げるにはできるだけ厚い銅を使用し、できるだけ薄い FR4 を使用します。
  • 両面基板より多層基板の方がより低い熱抵抗を実現できます。
  • 熱源である IC に近づく程基板の熱抵抗が高くなり温度上昇も大きくなるので、IC 近傍での低熱抵抗化は温度上昇を低下させるのに有利となります。
  • サーマルビアの多用は、IC と基板間の熱結合を良くします。
  • 基板の温度を低下させるには最低限必要な面積による制約があり、基板の材質では対応できません。

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