図:DDR メモリへの電源供給

6 - DDR メモリへの電源供給

デジタル機器の RAM には DDR 方式の SDRAM が広く普及していますが、DDR ではメモリセルの駆動用、リファレンス用、ターミネーション用合わせて三つ電源供給が必要になります。TI では DDR の規格に準拠した豊富な製品をラインアップすると共に様々な設計スタイルに幅広く対応しています。


DDR メモリの普及と進化

パソコンやサーバ、デジタルテレビや DVD レコーダなどのデジタル機器では、マイクロプロセッサや DSP と共に大容量の DRAM が搭載されます。DRAM には幾つもの種類があり様々な変遷を遂げていますが、現在は DDR(DDR1)、DDR2 そして DDR3 と進化を続ける DDR(Double Data Rate)方式の SDRAM が市場の大半を占めています。下の表に DDR 方式の規格をまとめました。プリフェッチを多くするなどによりデータレートやクロックが高速化しているほか、電源電圧も順次低下し、マージンが減少しているのが分かります。

  DDR DDR2 DDR3
データ転送レート (MT/s) 200 / 266 / 333 / 400 400 / 533 / 667 / 800 800 / 1067 / 1333 / 1666
クロック周波数 (MHz) 100 / 133 / 166 / 200 200 / 266 / 333 / 400 400 / 533 / 667 / 800
電源電圧 2.5 V 1.8 V 1.5 V
インターフェイス SSTL_2 SSTL_18 SSTL_15

図1:DDR の概要

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3 つの電源が必要

図2:DDR のI/O インターフェイスDDR は入出力のインターフェイスに SSTL(Stub Series Termi nated Logic)を採用しているのも特長です。メモリモジュールでは複数の DRAM チップを並列にして用いますが、SSTL は高速の信号を少ない波形ひずみでしかも低消費電力で転送できる方式です。図2 は SSTL の基本動作図です。メモリセルを駆動する電源を VDDQ と呼び、入力は VDDQ の 1/2 の電圧(VTT REF)を基準に判定されます。出力は出力抵抗を経て終端抵抗(Rterm)で VDDQ の 1/2 の電圧にプルアップ終端されます。

この終端電圧は VTT と呼ばれ、VDDQ やグラウンドではなく VTT に終端することで波形の乱れが少ない高速転送を実現しな がら電流を少なく抑えています。このように DDR では SSTL を採用したため VDDQ と VTT REF そして VTT の 3 種類の電源が必要になります。DDRと DDR2、DDR3 で SSTL の規格にも細かな違いがありますが、3 つの電源が必要という意味では変わりありません。

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トラッキングとシンク/ソース

DDR に必要な電源のうち VDDQ はメモリセル駆動用のメイン電源で、三つの中で最も大きな電流容量であることから、同期整 流のスイッチング電源が使われます。また、±3 %の電圧精度が要求されると共にメモリの動作の信頼性を確保するため電流の変化に対する高速な応答性も重視されます。VTT REF は電流はわずか(デバイス当たり約 1 m A )ですが電圧が正しく VDDQ の 1/2 である必要があり、±2 %の電圧確度と 10 mV 以下の低リップルが要求されます。電圧が VDDQ にトラッキング(追従)することが必要ですので機能的には電圧デバイダ(分圧器)ということになり、小さなアンプと抵抗のアナログ回路で構成できます。

三つ目の VTT は DDR(SSTL)独特の電源です。電圧は VDDQ の1/2 で VDDQ へのトラッキングが必要なことは VTT REFと同じですが(電圧精度±2 %、リップル 1 %以内)、メモリ出力の終端となるため、出力状態(Hi/Lo)に従って電流を吐き出すソースと電流を吸い込むシンク両方の機能を持ち合わせなければなりません。また、メモリの高速な反転に応答できる優れた過渡特性(-Imax から +Imax まで 5A/μs、±40 mV)も求められます。電流値はメモリの容量などにもよりますが、多くはアナログの LDO で対応できる値です。

ただし、ソース/シンクの機能が必要なため、回路構成としては VDDQ の 1/2 を入力とする大電流出力のバッファアンプになります。サーバなどの大容量 DIMM では VTT をスイッチング電源とすることもあります。その場合は VDDQ を分圧してリファレンス入力に接続します。なお、同期整流の降圧電源は出力側からは昇圧電源に見えるのでシンク時に入力電圧を上げる方向に働くことに注意する必要があります。

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幅広い設計スタイルに対応

DDR メモリでは、三つの電源を設計して実装しなければなりません。三つの中で VDDQ は汎用の同期整流ドライバの中から 応答性の良いタイプを選んで使うことができます。一方、VTT と VTT REF はトラッキングとシンク/ソース機能が必要なので専用の設計が必要になります。

テキサスインスツルメンツ(以下 TI)では、DDR メモリ向けに豊富な製品ラインアップを揃えています 〈図3〉。DDR の規格はアメリカの JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)によって策定・管理されていますが、表にある製品は JEDEC の要求事項に完全準拠しています。ちなみに表中の色の帯は、製品形態の違いを表しています。ピンクは汎用の電源製品同様に同期整流コントローラや LDO として提供される製品で自由度も高く量産品などに好適、黄色は TI が [SWIFT] と名付けているシリーズの仲間でスイッチングの FET を内蔵しており、小型化を必要とする製品に最適です。水色は外付けの受動部品等も取り込んで完成された回路として提供されるモジュール製品で、個々にカスタム設計が必要な用途などでは大変便利です。様々な設計スタイルに幅広く対応しているのも TI の DDR 電源のメリットで す。

製品名 トポロジー Vin (V) Iout (A) 機能 対応 DDR 規格
TPS40042 Controller 2.25 〜 5.5 Up to 15 VTT 1, 2, 3
TPS40056 Controller 8 〜 40 Up to 120 VTT 1, 2, 3
TPS51116 Controller + LDO 3 〜 28 *1 Up to 15, 3 VTT, VDDQ, VREF 1, 2, 3
TPS51020 Dual Controller 4.5 〜 28 Up to 15, 15 VTT, VDDQ, VREF 1, 2
TPS51100 LDO 1.2 〜 3.6 *2 Up to 3 VTT, VREF 1, 2, 3
TPS51200 LDO 1.1 〜 3.5 *3 Up to 2 VTT, VREF 1, 2, 3
TPS54372 Switcher with integrated
FETs [SWIFT]
3 〜 6   VTT 1, 2, 3
TPS54672 Switcher with integrated
FETs [SWIFT]
3 〜 6   VTT 1, 2, 3
TPS54972 Switcher with integrated
FETs [SWIFT]
3 〜 6   VTT 1, 2, 3
PTH03010/50/60Y Plug-In Module 2.95 〜 3.65 6, 10, 15 VTT 1, 2, 3
PTH05010/50/60Y Plug-In Module 4.5 〜 5.5 6, 10, 15 VTT 1, 2, 3
PTH12010/50/60Y Plug-In Module 10.8 〜 13.2 6, 10, 15 VTT 1, 2, 3

*1) Needs 4.5 to 5.5V bias  *2) Needs 4.75 to 5.25V bias  *3) Needs 2.4 to 3.5V bias

図3:TI のDDR 用電源製品

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3 電源を 1 個にまとめた製品も

ここでは TI の DDR 用電源製品の代表例として TPS51116 を採り上げました 〈図4〉。TPS51116 は、同期式バック・コントローラ、3A のシンク/ ソース・トラッキング・リニア・レギュレータ、低ノイズのバッファ付き基準電圧を内蔵し、1 個で VTT、VTT REF、VDDQ 三つの電源を構成できます。

VDDQ 用のコントローラは、アダプティブ・オンタイム・コントロール方式を用いた擬似定周波数 PWM で動作し、高速過渡応答のリップルレギュレータである D-CAP モードを構成できます。図5 には過渡応答波形を示しました。VTT 用の LDO は過渡的な大電流に耐えることが必要で、出力に大容量のコンデンサを接続するのが一般的ですが、TPS51116 では 20μF(2×10μF)の小さなセラミックコンデンサを用いるだけで良好な過渡応答を実現します。

低速動作でローコストなアプリケーションなど一部では、VTT REF と VTT を抵抗だけで済ませてしまう例も見受けます。しかしながら、DDR メモリは機器の動作の根幹を担うものであり、確実な動作を得るためには専用に設計された電源を使うことが強く推奨されます。

図4:TPS51116 標準接続図と図5:VDDQ の過渡応答波形

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