ダイオード整流と同期整流の違い

降圧コンバータには大きく分けて同期整流方式とダイオード整流方式があります。電源ICを選択する場合、各々のメリット・デメリットを知り適切な選択をする必要があります。ここでは整流方式による電源ICの機能と選択方法を説明します。

一般的なDC/DCコンバータは 2 つのスイッチを持っています。1 つ目のスイッチは入力を ON/OFF してインダクタへ供給するエネルギー量を制御し 2つめのスイッチはインダクタのエネルギーを入力と異なる出力電圧へ供給する為の整流動作を行います。この 2 つめの整流動作を行うスイッチにダイオードを使用しているのがダイオード整流方式で、ここに FET を使用してクロックに同期させて必要なタイミングで FET のゲートを ON/OFF 制御して整流動作をさせているのが同期整流方式です。

ダイオード整流方式はスイッチが 1 個しか要らないので電源ICの制御回路も簡単に構成出来るので低価格な電源を構成することが出来ます。これに対して同期整流方式は 2 個のスイッチが必要でスイッチのタイミング制御も高い精度が必要で制御回路が複雑と成るので価格的には高価な電源となります。では性能能面からのメリット・デメリットは同期整流方式の方が遥かに高性能です。以下はダイオード方式と比較した同期整流方式のメリットです

1:高効率

出力電圧が低くなるとハイサイドスイッチの ON 時間が短くなります。ここ結果ロウサイドスイッチの ON 時間及びダイオードの導通時間は長くなります。また、この時インダクタが供給するエネルギーは出力電圧+ロウサイドスイッチの抵抗×出力電流、または出力電圧+ダイオードの VF となりますが、出力電圧以外の部分は損失となります。ダイオードの VF は 0.5V 程度有りますが出力電圧が低くなるとこの損失の割合が大きくなり電源としての効率は出力電圧の低下に伴い下がってしまいます。これに対して同期整流はスイッチでの損失電圧をはるかに小さく出来るので低出力電圧でも高い効率を実現できます。

ダイオード整流方式 同期整流方式
ダイオード整流方式 同期整流方式


2:高速過渡応答特性

負荷電流が急激に減少した場合、インダクタがその時点で保持していたエネルギーが過剰となり出力コンデンサの充電を行う結果出力電圧が上昇してしまいます。ダイオード整流では上昇した電圧は負荷電流が減少している為に、上昇した電圧が放電して低下するのに時間がかかりますので過電圧状態が長く続きます。同期整流ではダイオードと異なりスイッチの制御で電流を逆流させる事が出来るので出力電圧が過剰となった場合、電流を逆流させて出力コンデンサの過剰なエネルギーを入力側へと放電して高速に電圧を低下させる事が出来ますので負荷変動に対する過渡応答特性が優れています。

3:無負荷時でも安定した出力電圧

ダイオード整流方式は出力電圧をアクティブに低下できないという欠点が無負荷時にも発生する事が有ります。負荷電流が減少してくると負荷電流がインダクタリップル電流の P-P 値の半分以下になった時点で通常負荷時の Vout/Vin の比率でスイッチが ON/OFF するとエネルギーが過剰となるので電流の減少とともに ON 時間が減り、必要なエネルギーを減少させる動作をします。電流の減少とともにパルス幅は小さくなるのですが、パルス幅が最少ON時間に達した時点でそれ以下の幅に減少できないので最少 ON 時間でスイッチが入り続ける場合があります。負荷電流がこの時点より下がるとエネルギーが過剰となり出力電圧が設定電圧より大きく上昇してしまう場合があります。同期整流方式では電流の逆流動作が可能な為に無負荷でも同じデューティ比のままで安定した出力電圧を維持できます。

4:軽負荷時でも低ノイズを維持

ダイオード整流方式では負荷電流が減少するとインダクタ電流が不連続状態となります。この時インダクタが開放状態となりスイッチノードに高周波のリンギングが発生し、EMI の放射が発生します。この結果電流が大きいときは低ノイズなのに、電流が減少するとノイズが増加して問題となる場合があります。これに対して同期整流ではインダクタ電流が不連続状態とはならず全電流範囲で低ノイズ動作が維持されます。

ダイオード整流方式はこれらの点で同期整流方式に劣りますが、1 の効率は出力電圧が 3.3V 以上ではその差があまり出ない、2 の過渡応答特性は負荷電流の変動が少なければ余り問題には成らない、3 の無負荷時出力電圧は最低負荷電流以上の負荷が常に有れば問題は無い、4 の軽負荷時のノイズも出力電流が有る一定以上あれば発生しない。という使用条件の場合はそのメリットは少なくなります。

降圧型 DCDC コンバータはデューティ比の制限から入力電圧の 1/10 以下の電圧を作るには様々な制限が発生するので高電圧から低電圧を作る場合大抵は一度中間電圧を作り中間電圧から 2 段階に電圧を落とす方式がとられます。この前段の降圧コンバータは出力電圧が 5V か 3.3V と高く後段に何個かの DCDC コンバータが接続されるので合計電流での変動が少ないのと最低負荷電流が有る程度以上は確保されるという使用条件となるので大抵の場合は安価なダイオード整流方式が使用可能です。 しかし 2 段目の降圧コンバータは出力電圧が低い、CPU のコア電源などの単独負荷用なので電流変動が大きく電圧精度の要求も厳しい事から同期整流方式の電源IC の方が適しています。

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