電源IC に何故、位相補償が必要なのか Part1

電源IC のほとんどの製品には位相補償回路が必要です。位相補償回路は内蔵されていて設定の変更が出来ない内部位相補償と外部で CR により自由に設計を行なう外部位相補償があります。位相補償を行わないと電源回路が安定して動作せず、出力電圧を一定に保つことが出来なくなり、最悪の場合、出力電圧が発振状態となり、出力に接続された回路を破壊してしまいます。位相補償回路がないと何故発振してしまうのか?そもそも位相補償とは何をやっていて、何のためにあるのでしょうか?

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位相補償の必要性を考える時、まず必要なのが負帰還制御とは何かを知る必要があります。制御理論と伝達関数の話をするとややこしくなるのでなるべく簡単に説明します。

電源回路では出力電圧を一定に保つ為に図 1 の様に出力電圧 Vo を H により分圧して基準電圧 Vref と比較する為に負の帰還をかけて誤差を検出して電圧制御部 G でパワーの増減を行い、誤差が最少となるようにしています。このループによる制御により、出力電圧が設定値に収束するようにサーボ制御を行なっています。負荷電流が変化すると出力電圧も変動するので、この電圧の変動が負帰還により電圧制御部に伝達され設定電圧との差を減少させる方向に制御が行われて電圧が元の設定値に戻ります。

図 1 - 負帰還制御



この負帰還制御に全く遅延がなければ問題はないのですが、現実的な電子回路による制御では動作速度に限界があるために必ず制御遅延が発生します。負帰還回路では出力電圧が下がれば上げて、上がれば下げるという逆の制御を行って誤差を収束させますが、誤差変動の速度が速くなり、出力電圧の変動の振動周期の半分の時間と遅延時間が同じになると上げ下げの制御が全く逆になってしまい負帰還のはずが正帰還になってしまい、変動が減少しないで増幅されてしまいます。この周期の半分の遅れが、位相が 180 度遅れたということです。回路の持つ遅延時間はその回路によりほぼ一定なので、その遅延時間の 2 倍の周期の周波数でこの 180 度位相遅れが発生します。しかし、制御系のゲインがこの周波数で 1 以下だと正帰還の状態でも減衰振動となり、収束して発振状態にはなりません。

負帰還の制御系が発振に至る 180 度の位相遅れとゲインが 1 倍=0dB に対して、系が安定している目安として、図 2 に示すようなゲイン‐位相の周波数特性を測定します。ゲインが 0dB になる周波数での位相遅れが 180 度に対して何度の余裕があるかを位相余裕、位相が 180 度遅れた時のゲインが-何 dB あるかをゲイン余裕、と規定して系の安定性の指標としています。電源回路では位相余裕が 45 度以上、ゲイン余裕が 20dB 以上(6dB 以上で良いという理論もある)あれば、安定した電源であるといわれています。

図 2 - ゲイン・位相 対 周波数特性


(Part 2/3 に続く)

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