その電源、無負荷でどうなりますか?


Part1:そのリニア・レギュレータ、無負荷でどうなりますか?

DC/DC コンバータやリニア・レギュレータでは、設計された定格負荷電流の時には設計通りに動作するので、通常問題は発生しません。しかし、設計負荷時と無負荷時では動作条件が大きく変わることにより、動作に問題が発生する事があります。無負荷時に出力電圧がどうなるのか。また、全負荷状態からいきなり無負荷になると何が起きるかに注意する必要があります。電源の無負荷時の動作の 1 回目としてリニア・レギュレータにおいて無負荷時に発生する出力電圧の挙動と 全負荷→無負荷 への負過電流の急激な減少が起きた時の過渡応答がどうなるかについて述べます。

リニア・レギュレータの無負荷での動作
リニア・レギュレータは等価的には図1の様になっており、パストランジスタにより IN と OUT の間の抵抗を変化させて、Vin から Iout× 抵抗による電圧低下を制御して一定の出力電圧を Vo=Vin-Iout× 抵抗 により作っています。負荷電流が減少するとそれに応じて抵抗値を上昇させて同じ電圧降下が発生するように制御して、設定された出力電圧を維持しています。ところが電流がさらに減少して Iout が 0 になると I×R による電圧のドロップが無くなりますので、パストランジスタの抵抗が無限大になっても Vo=Vin となってしまう可能性が出てきます。しかもトランジスタには僅かながらリーク電流が発生するので抵抗は無限大にはなりません。では何故無負荷でも制御した電圧が作れているかというと、リニア・レギュレータの出力には無負荷時でも電圧設定用の抵抗がついているので、この抵抗に流れる電流により、完全に無負荷にはなっていないので無限大の抵抗まで変化する必要は必要無いからです。


電圧設定抵抗に流れる電流は動作中には常時流れているので、リニア・レギュレータの消費電流は IC の回路動作電流である GND 電流だけではなく、電圧設定抵抗に流れる電流も回路消費電流として計上する必要があります。携帯機器では電池での稼働時間を少しでも延ばすために 1μA 単位で電流消費を計算しているので、ここの電流を減少させるために、数 100K~MΩ 級の抵抗を使用して電流を数 μA まで減少させたりしています。ところがパストランジスタが高温になるとリーク電流が大きくなって、電圧設定抵抗で消費される電流よりリーク電流の方が大きくなると出力電圧が上昇してしまいます。使用する IC の推奨回路での抵抗値の設定が低い場合は、このリーク電流も考慮して抵抗値を選んでいる場合があるので、消費電流を減少させようとして抵抗値を大きくすると使用温度によっては出力電圧が上昇してしまうなどの問題が発生する事があるので、負荷電流がほとんど 0 になるケースがある場合には抵抗値を仕様書に規定された値より大きくしない方が安全です。

リニア・レギュレータで高速に負荷電流減少が発生すると何が起きるか
ではリニア・レギュレータで最大負荷から無負荷に急激に電流が減少すると何が起きるでしょうか?例えば 5V から 3.3V/1A を作っているリニア・レギュレータを考えて見ると、1A の電流で 5V から 3.3V に落としているのでトランジスタは (5v-3.3v)÷1A=1.7Ω の抵抗として動作しています。この時負荷は 3.3V÷1A=3.3Ω の抵抗と等価になります。出力電圧の設定用のディバイダが合計 100KΩ、出力コンデンサに 1μF が付いていたとすると等価回路的には 図2 の様になります。この状態から負荷が急激に無限大となると、レギュレータが供給していた 1A の電流によって1μFの出力コンデンサが充電されて電圧が上昇します。電圧上昇によりFETを高インピーダンス化させて充電電流を減少させますが、制御遅延時間の間、大電流による短時間の充電により上昇した出力コンデンサの電圧は負荷電流が無いので、ディバイダ抵抗への電流だけの放電となり、設定電圧まで戻るのに長い時間が必要となり、負荷の回路に対して過電圧の印加状態が長く続いてしまう事があります。


データシートには負荷電流の変動に対する出力電圧の負荷過渡応答特性(Load Transient Response)が書かれている事が多くありますが、元々 LDO には出力電圧を下げる制御能力は無いので電流減少時の電圧低下特性は実は全く意味がありません。電圧が上がりっぱなしになるデータでは問題となるので、1A→10mA といった、無負荷にしない条件で測定されていたり(この時出力コンデンサは 10mA の負荷電流で放電して電圧が下がっている)、負荷電流の減少速度を遅くしてコンデンサからの放電時間をかせぎながら測定を行なうなどしている事が有ります。アプリケーションで全負荷→無負荷という高速の負荷変動が発生する可能性が有る場合は出力電圧のオーバーシュートが発生して問題となる電圧まで上昇していないかを実機で確認しておく必要があります。


LDO の中にはこの問題を解決するために、図3 の様に出力が過電圧状態になったときに出力コンデンサを放電し電圧を低下させるためのスイッチ付き放電抵抗を内蔵した製品もあります。


(Part 2 DCDC コンバータ編に続く)


 

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