LDO のドロップアウト電圧とは

LDO リニア・レギュレータのドロップアウト電圧とは
LDO とはLow Drop Out の略で入出力間に必要な最低電位差が低い事を意味しており、低い入出力間電位差でも動作するリニア・レギュレータという事になります。日本語では、LDO リニア・レギュレータを低損失型リニア・レギュレータまたは低飽和型リニア・レギュレータと呼ばれています。しかし、何をもって LDO と呼べるかという規格がある訳ではなく、測定方法などの基準がある訳ではありません。メーカーにより測定方法が異なりますので、単純にデータシートのドロップアウト電圧の値だけを比較しても優劣はつけられません。LDO を正しく使うにはドロップアウト電圧とは何かを正しく理解する必要があります。

メーカーごとに異なるドロップアウト電圧値の測定条件
TIや多くのメーカーでは、その LDO に規定された最大電流を流した時の最低入出力電圧で規定されています。しかし一部のメーカーでは 200mA の LDO なのに規定は 50mA 時の値となっているなど、同一メーカーなのに製品によって測定基準がばらばらな場合もあります。ドロップアウト電圧は出力電流に依存するので、同じ電流条件で比較しないと意味がありません。しかし測定条件がばらばらのデータを比較に使用できる数値に変換する必要があります。この変換にはその LDO がどういった構造でなぜそのドロップアウト電圧となるかの構造的理由と、どういった測定条件による値なのかを知る必要があります。

そもそもドロップアウト電圧とは
リニア・レギュレータの内部には Vin から Vout の間にトランジスタが入っており、このトランジスタの入出力間の電圧を、ベースやゲートへのドライブを制御して Vin-トランジスタによるドロップ電圧=出力電圧 として入力より低い安定化した出力電圧を作っています。入力電圧が下がるとトランジスタでドロップさせている電圧を小さくしますが、使用しているトランジスタと制御回路の構成によりこのドロップ電圧をどこまで下げられるかの限界が発生しますのでこの最小ドロップ電圧をドロップアウト電圧と言います。


注)動作電源電圧範囲が 1.8V から 5.5V でドロップアウト電圧が 0.2V の LDO の場合、出力電圧が 3.3V なら最低入力電圧は 3.5V という事になりますが、出力電圧が 1.2V の場合単に出力電圧の 1.2V に 0.2V を加算した 1.4V では LDO 自体の最低動作電圧以下なので、この電圧ではそもそもレギュレータが動作できません。最低動作入力電圧は(出力電圧+ドロップアウト電圧) と 最低動作電圧 のいずれか高いほうという事になります。この LDO の最低動作電圧が1.8Vの場合だと 1.8V からしか 1.2V を作れないので、入出力間電位差は 0.6V となります。この LDO では出力電圧が1.6V未満の場合はドロップアウト電圧という値自体に意味が無いという事になります。

バイポーラトランジスタの場合とFETの場合のドロップアウト電圧
ドロップアウト電圧は、使用するトランジスタがバイポーラ型かFET型かにより、まず大きく 2 分されます。バイポーラトランジスタの場合、コレクタ・エミッタ間の電圧VCE をどこまで小さく出来るかで決まります。ベース電流をどんどん増加させてトランジスタを飽和領域で使用すると VCE は 0.2V 以下まで低下します。この飽和電圧はコレクタ電流の大きさで少しは変わりますが、あまり大きくは変化しない値となります。このためにバイポーラトランジスタによる LDO の場合はドロップアウト電圧の測定電流にあまり注意する必要は無く、トランジスタの大きさ=LDO の出力電流 に依存せずほとんどの製品で 0.2V 未満のドロップアウト電圧となります。トランジスタの大きさは流す電流にのみ依存します。これに対して FET を使用している場合では、ドロップアウト電圧は使用している FET により様々な価となります。FET の場合は最小ドロップアウト電圧=ソース・ドレイン間の電圧はFETがフル ON している時の抵抗値(RDS_ON)に出力電流をかけた値となります。例えば 300mA の LDO で、使用している FET の ON 抵抗が 1Ω なら、ソース・ドレイン間電圧は 300mV まで下がる事が出来るので最小ドロップアウト電圧は 300mV となります。同じ電流で ON 抵抗が 0.1Ωの場合、ドロップアウト電圧は 30mV となりますし、10Ω の場合は 3V となります。使用する FET の ON 抵抗により好きなドロップアウト電圧の製品を作る事ができますがドロップアウト電圧を下げるほど RDS_ON の値を下げる為に FET が大きくなってしまうので IC としての価格は高くなります。

注)この比較はいずれもベース及びゲートの駆動に制限が無い場合での話となります。実際にはベースやゲートの駆動回路の電源がVinから供給されているのでVinの電圧によってはベースやゲートの駆動電圧を供給できなくて入出力間にさらに大きな電圧差を必要とする場合があります。この場合はトランジスタではなくベースやゲートの駆動回路に必要な電圧で最低電圧が大きな制約を受ける事になります。(例えば 78 シリーズの約 2V)


ドロップアウト電圧の測定条件
FET 型の 300mA の LDO でドロップアウト電圧が、A 社製品は VDO=300mV(Io=300mA時)、B 社製品は VDO=100mV(Io=50mA時)と言うスペックの場合があります。A 社は全負荷での値、B社は実使用条件付近での値という記載方法を取っている事になります。A 社製品は 300mV÷300mA=1Ω の RDS_ON 値の FET を使用し、B 社製品は 100mV÷50mA=2Ω の RDS_ON 値の FET を使用している事になります。A 社製品は 50mA 負荷時のドロップアウト電圧はおおよそ 50mA×1Ω=50mV と成りますし、B 社製品は 300mA 負荷時のドロップアウト電圧は おおよそ 300mA×2Ω=600mV 必要と言う事になります。必要なドロップアウト電圧は実際に出力される最大電流で計算する必要が有りますが、最大出力電流が 200mA の場合は A 社品でも 300mV ではなく 200mV の電位差が有れば動作は可能ですし、B 社品では 400mV の電位差が必要となります。LDO としてのドロップアウト電圧の性能は A 社製品の方が良い事にはなりますが、例えば 3.3V から 2.8V を作る場合、入出力電位差は 500mV あるのでどちらで良いという事になります。RDS_ON が 2Ω の B 社製品の方がその分小さな FET で設計しているので低価格な可能性が大きいという事になります。


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