電源回路のソフトスタートの話


Part1: 起動時のラッシュ電流

電源を起動すると、出力電圧の立ち上がりによる起動時ラッシュ電流が流れます。この電流が大きすぎると電力を供給している前段の電源回路や電池からの供給電流が過電流状態となり、電圧降下が発生し、最悪のケースでは供給している電源がシャットダウンしてしまうなどのトラブルが発生することがあります。こういった問題を回避するために電源回路はソフトスタートの機能をもっており、入力での突入電流を減少させる工夫をしています。ソフトスタートには大きく分けて、電圧制御型と電流制御型が有り、各々メリットとデメリットがあります。ラッシュ電流の発生原因と各ソフトスタートの違いを 3 回連載で説明してゆきます。

電源起動時のラッシュ電流はなぜ発生するのか。
電源が起動し、出力電圧を 0V から設定電圧まで上昇させる間に電源から出力される電流により入力でのラッシュ電流が発生します。この出力電流には出力に接続された負荷回路に流れる電流もありますが、電源自体の持っている出力コンデンサを設定電圧まで充電するのに必要な電流も電源ICからは出力されます。電源の入力で発生するラッシュ電流の一番大きな要因は出力コンデンサへの充電電流を供給する為の電流が一番大きい事が多く、その次に負荷に流れる電流に起因したものとなります。


出力コンデンサの充電に起因するラッシュ電流
スイッチング周波数の上昇により、出力コンデンサの容量は年々減少してきているので影響度は減少していますが、まだ大容量の出力コンデンサを必要とする電源回路は多くありますし、出力コンデンサだけではなく電源ラインに巨大なコンデンサを瞬停対策として入れてある場合もあり、電源回路は起動時にこれらの電源ラインに接続された全てのコンデンサを 0V から設定電圧まで充電する必要があります。例えば電源ラインに接続されているコンデンサが合計 1000μF の 3.3V の電源を考えてみます。Q=CV から 1000μF を 3.3V まで充電するには 3300μ クーロンの電荷が必要です。これにより、1A の定電流充電では電圧の上昇に 3.3msec の時間が必要であり、10μs でこの電荷量を移動させるには 330A の充電電流が必要だという事になります。大容量のコンデンサの電圧を高速に立ち上げるには非常に大きな電流が必要だという事になります。

使用している電源回路が 3A の供給能力しか無いなら 3300μ クーロン÷3A=1.1msec 以上の時間をかけて電圧が上昇する工夫をしないと、これより高速に電圧を上昇させようとすると 3A 以上の電流を必要とする事になるので電源回路の過電流制限回路が動作してしまう事になります。垂下型の場合は単に電流が制限されて立ち上がり時間が延びるだけですが、フの字型やラッチするタイプの電源は起動できなくなる場合が有ります。過電流制限の動作方式によっては短絡と同様な事態に陥る事になる事に注意する必要があります。

負荷電流に起因するラッシュ電流
出力コンデンサ以外のラッシュ電流には負荷の抵抗値が非線形な場合や負性抵抗の特性によるものがあり、多電源で動作する半導体などでの起動時電圧のアンバランスや起動順位による逆電圧状態により定格電流の数倍の電流が流れるもの、モーターやソレノイドなど、負荷自体が負性抵抗特性を持っていて起動時ラッシュ電流が流れるもの、後段が DC/DC コンバータで定電力負荷として動作し、電圧が低い時ほど電流が増加する状態となっているものなどがあります。また DSP や FPGA などの多電源で動作するICでは起動時の電源投入順序により半導体内部の寄生ダイオードに大きな電流が流れる場合もあります。




モーターやソレノイドなどは電源出力と負荷の間に ON/OFF の為のドライバ素子が入っている場合は電源起動時にはこれらの負荷が OFF 状態となるようにしておく、後段が DC/DC コンバータの場合は出力電圧が設定電圧に達するまで後段のスタートを遅らすなどを行い、電源起動時に負荷が電流を消費しないような回路構成とする。DSP や FPGA には必要に応じて電源投入時にシーケンス制御を行うなどが必要となります。

DC/DC コンバータのソフトスタートの制御方式
起動時のラッシュ電流を防止するには負荷電流の対策を取っても出力コンデンサへの充電電流は抑制する必要があるので出力電圧の上昇速度を遅らせて、コンデンサへの充電電流が有る一定以下と成るように制御するソフトスタートの機能が必須となります。DC/DC コンバータには大きく分けて電圧モードの負帰還制御と電圧モードの負帰還制御が有りますが、起動時のソフトスタートの制御方式にも電圧モードと電流モードが有ります。各々、メリット・デメリットが有りますが、その違いを良く理解していないと、スタートアップシーケンスが必要なFPGA や DSP での電源設計時に予定道理に立ち上がらずに起動不良が発生する事もあります。次回からは各々の起動方式により何が異なり、どういった問題が発生する可能性があるかを話してゆきます。


(Part 2 に続く)

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