直流バイアス特性によるセラミック・コンデンサの実容量の問題

積層セラミック・コンデンサの容量が年々増加し、100μFの製品も登場してきています。DC/DCコンバータのスイッチング周波数の上昇により、OSコンやPOS-CAPでは高周波での特性の劣化から、1MHz以上のDC/DCコンバータではセラミック・コンデンサだけを使用した電源が標準となろうとしています。しかしセラミック・コンデンサは小型化の要求に対応してサイズを3216から2012へ、そして1608へと小型化を進めた結果、電源用のコンデンサとしての能力に問題が発生する状態になってきています。それは表記容量と実際に使用する動作条件下での実容量との間に大きな隔たりが発生しているという問題です。セラミック・コンデンサを選択する時には、そのコンデンサの実容量が幾らであるかに注意して選択する必要があります。

セラミック・コンデンサの直流バイアス特性と温度特性
セラミック・コンデンサの実用容量は、使用する誘電体によっては室温より温度が上下すると容量が大幅に減少し、さらに直流電圧を印加すると電圧の上昇につれて容量が減少してゆくという特性があります。「初心者の為の電源設計セミナーPart1」でも話していますが、誘電体がY5VやFの製品です。


コンデンサの容量の規定は直流電圧を印加しない0Vバイアス状態での容量を交流インピーダンス測定などにより計測を行なっていました。このために106の型番を持ち、10μFという容量で規定されているコンデンサも図の様に温度を振る、直流バイアスをかけるなどで大幅に容量が減少してしまい2μF程度の容量まで実容量が減少していました。Part 1を作った2006年の時点では誘電体材質による容量問題だけだったので、誘電体のタイプと使用電圧/耐圧に注意しましょう、Fは駄目ですよ、という説明をしてきました。


小型化による直流バイアス特性の劣化

「初心者の為の電源設計セミナーPart2」は2008年に作られましたが、この間にコンデンサの小型化が進み、直流バイアス特性による劣化が進行しました。このセミナーでは温度特性の良い、X5RやBの誘電体を使ったとしても右図のようにサイズが小さいほど印加する電圧により実容量は表記容量より大幅に小さくなってしまっており、容量の減少を回避するには大きなサイズの製品を選択するか、印加電圧の数倍の耐圧を持つ製品を選択して直流バイアス特性の影響を少なくする必要があります。という説明に変化しました。

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図: X5R 誘電体のコンデンサの 実容量特性

更なる小型化、1608サイズのセラコンの特性

2010年になるとセラコンの小型化は更に進行し、1608サイズで10μF/25Vという製品が登場しました。このサイズで高耐圧・大容量と言う事で多くの顧客で使用されましたが、何度もトラブルが発生しました。このコンデンサの電圧容量特性を見ると右下図の様になっており、25Vもの耐圧が有りながら、5Vで使用すると容量は半分以下しかありません。使用電圧の2~3倍の耐圧マージンを取っていれば普通は直流バイアス特性による影響を無視できていたはずだったのが、小型化による特性劣化の進行で低い電圧から容量の減少が始まっていて5倍の耐圧をもたせていても足りていませんでした。出力容量の不足から電源ICの動作が不安定となり、電圧がふらふらして安定しないというトラブルが発生したのでした。顧客としては電源ICのデータシートに書いてあるのと同じ106=10μFを使用しているのに電源ICが正常に動作していないので電源ICの問題とされており、コンデンサが悪いと説明してもなかなか納得していただけませんでした。


X5Rなどの温度特性の良い誘電体を選択し、充分な耐圧のディレーティングを持たせたとしても小型パッケージのセラコンの実容量は定格容量の半分以下しかない場合があります。コンデンサの容量の規定は直流電圧が0Vでの交流での測定で、公差の+/-20%もその容量に対してであり、3Vを印加するだけで容量は20%減少し、定格電圧の25Vを印加すると-90%以上、つまり容量が10%未満になってしまうスペックです。表記容量は実際の使用環境での実容量の値を保障しているものでは無いと言う事に注意する必要があります。回路設計時に計算された容量は実容量であり、例えば計算結果が8μFだった場合、誤差を見込んで10uF=106 を選んでいたはずなのに、必要な容量を確保するには106の型番を持つ公称容量10uFのコンデンサを2個並列に接続して使用しないと計算値を満足する容量を確保できない事になります。

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小型化のためにサイズの小さなコンデンサを選択した結果、実容量の不足で動作が異常となり、2個使用するか、公称値が2倍のコンデンサを選択する事が必要となります。却って基板面積は増加してしまい、トータルコストのアップにもなる可能性があります。セラミック・コンデンサを選択する時は必ず製品ごとの個別データシートかWEBツールなどにより温度や印過電圧に対する容量特性を調べて、実際に使用する環境条件で実容量が幾ら有るかを良く確認し、電源設計時に必要とされる容量のスペックを満たしているかを確認しながら部品の選択を行ってください。

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