◆電源回路の制御モード:電圧モード制御、電流モード制御、リップル制御

電源回路の制御モードとは、出力電圧の安定化に用いるフィードバック・ループの帰還方式のこと。大きく分けると電圧モード制御方式と、電流モード制御方式、リップル制御(ヒステリシス制御)方式がある。現在市販されているスイッチング・レギュレータ IC(DC/DC コンバータ IC)には、この 3 つの方式のうちのいずれかが採用されている。

主流は電圧モードと電流モード

電圧モード制御方式と電流モード制御方式、リップル制御(ヒステリシス制御)方式は、いずれも一長一短がある。以下で 1 つ 1 つ見ていこう。

最も基本的な方式は、電圧モード制御方式である(図 1)。これは、フィードバック・ループを介して、出力電圧のみを入力に帰還する方式である。そしてエラー・アンプ(誤差増幅器)で基準電圧と比較し、その差に相当する電圧を三角波と比較して PWM 信号のパルス幅を決めて、出力電圧を制御するわけだ。

図 1 電圧モード制御方式

この方式の特長は、電圧のループしか存在しないため、制御自体が比較的単純なことに加えて、オン時間を短くできることや、EMI 耐性が高いことなどが挙げられる。しかし、一方で、位相補償回路が複雑になるという欠点を抱えている。位相補償回路は、電源IC ユーザーが設計する必要がある。従って、ユーザーにとっては、使いにくい方式というわけだ。

電流モード制御方式は、電圧モード制御方式の改良型である。具体的には、電圧モード制御の制御ループで使う三角波を、電源回路自身のスイッチング電流(インダクタ電流)に置き換えた方式である(図 2)。従って、電圧のループのほかに、電流のループを持つ。制御自体は比較的複雑になるが、位相補償回路の設計が大幅に簡単になる。このほか、フィードバック・ループの安定性が高いことや、入力電圧変動特性に優れること、スイッチング素子(パワー MOSFET)の過電流保護機能を原理的に備えていることなどのメリットも兼ね備えている。

図 2 電流モード制御方式

高速応答特性に優れるリップル制御方式

しかし、電圧モード制御方式と電流モード制御方式はいずれも、負荷急変時の応答速度が比較的低いというデメリットがある。その理由は、エラー・アンプの周波数特性や、スイッチング動作の 1 周期分に相当する無駄時間遅れが存在すること、位相補償回路(LC フィルタ)の周波数特性によって応答速度が制限されるためである。

一般的な用途ではあまり気にはならないレベルだが、動作状態が急激に変化するマイクロプロセッサなどの用途では深刻な問題である。ただし最近、薄型テレビや Blu-ray Disc レコーダなどの民生機器に搭載するマイコンや DSP、FPGA などでも、動作状態が急激に変化する品種が使われるようになっており、こうした民生機器でも応答速度の問題が顕在化しつつある。

そこで現在、採用するスイッチング・レギュレータ IC が増えているのがリップル制御方式である。リップル制御方式とは、出力電圧を監視し、設定したしきい値を上回った(下回った)ことを検出したならば、それをトリガとしてスイッチング素子のオン/オフを制御するというものだ。しきい値を下回ったことを検出する「ボトム検出、オン時間固定方式」、しきい値を上回ったことを検出する「アッパー検出、オフ時間固定方式」などがある。なお、上側と下側に設定したしきい値のウインドウを利用する方式もある。これをヒステリシス制御方式と呼ぶ。

リップル制御方式では、エラー・アンプを使わない。コンパレータで出力電圧と基準電圧を比較して,スイッチング素子のオン/オフを制御する。このため,エラー・アンプの周波数特性による遅れや,スイッチング動作の 1 周期分の無駄時間遅れが発生しない。応答速度は、出力部の LC フィルタで決まる。このため、非常に高い応答速度が得られるというメリットがある。

ただし、コンパレータでのしきい値検出でスイッチング動作のタイミングを決めるため、スイッチング周波数が変動したり、大きなジッタが発生したりするデメリットがあるので注意が必要だ。

2014 年 4 月 30 日
(記事中の情報はすべて掲載時点のものです)
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