◆力率改善回路 (PFC)

力率改善回路とは、電源の力率(power factor)を 1 に近づける回路のこと。PFC(Power Factor Correction)回路と呼ぶことが多い。

力率改善回路が必要な理由は、高調波電流規制が存在するからである。この規制は、電子機器に搭載された電源(スイッチング電源)で発生する高調波電流をある制限値以下に抑えることを求めるものだ。スイッチング電源への入力周波数は通常 50Hz、もしくは 60Hz である。しかし、スイッチング電源の回路構成上、何の工夫もしないと、50/60Hz の 2 倍、3 倍、4 倍、5 倍、6 倍・・・という高調波電流成分が発生してしまう。これが商用電源側に大量に流出すると、電力の送配電設備(進相コンデンサなど)を損傷させるなどの問題が発生する。この問題を未然に防ぐために策定されたのが高調波電流規制値である。テレビやパソコン、照明器具、白物家電などの電子機器は、この規制値を守らなければならない。さもないと、製品を市場に投入できない。

規制値は、IEC(国際電気標準会議)で策定されており、規格名は「IEC 61000-3-2」である。世界各国(地域)は、この規格を国内法に反映させて運用している。例えば、欧州地域で運用されている域内規格は「EN 61000-3-2」である。

なお、力率とは、交流電力の電圧と電流の位相差を φ とすると、力率 =cosφ で求められる。つまり、電圧と電流の波形がいずれも正弦波のときは 1 となる。これが理想的な状態だ。電流の波形が歪めば歪むほど 1 から遠ざかる。従って、力率を 1 に近づけることは、高調波電流を低く抑えることと同義である。

元凶は入力平滑コンデンサ

スイッチング電源において高調波電流が発生する原因は、入力の平滑コンデンサにある。いわゆるコンデンサ・インプット型の電源回路で起きる現象だ(図 1)。商用電源の入力交流電圧は、ダイオード・ブリッジを使った整流回路の後段にある入力平滑コンデンサに印加される。これと同時に電流が流れれば問題ないが、実際はそうならない。入力交流電圧が、平滑コンデンサの端子電圧よりも低い期間は電流が流れないからだ。そして、入力交流電圧が上昇して端子電圧を超えると平滑コンデンサへの充電が始まり、電流が流れるようになる。この結果、入力電流の波形は、正弦波から大きく歪んでしまうことになる。これが、高調波電流が発生する理由である。

図 1 力率が低下する理由
力率が低下する理由は、高調波電流にある。電圧波形(Vmains)と電流波形(Imains)の両方が正弦波であれば、高調波電流は発生せず、力率は 1 となる。しかし、電源回路には入力コンデンサが存在するため、電流波形(Imains)は正弦波にならない。このため、高調波電流が発生する。つまり、力率が低下するわけだ。

高調波電流を低く抑えるには、入力電流の波形を正弦波に近づければよい。実現手段としては、2 ステージ方式と 1 ステージ方式がある。2 ステージ方式とは、2 つのコンバータを用いて PFC と DC/DC コンバータを独立して制御する方式である。それぞれの回路動作が干渉することなく、入力電圧範囲と負荷条件のいずれもが広くても、高い精度の高調波電流対策を実現できる。この PFC に向けた DC/DC コンバータは、入力交流電圧が低い場合でも強制的に電流を流すように機能する。この結果、入力電流波形がほぼ正弦波に近づくわけだ。特長は、高い力率が得られること。0.98 を超える力率を実現できる。デメリットは、回路が複雑になることや、変換効率が低下することなどが挙げられる。

1 ステージ方式は、既存の電力変換回路の構成を工夫して、力率を高めるものだ。比較的シンプルな回路構成で実現できることや、変換効率の低下をわずかに抑えられることなどのメリットがある。力率も 0.90~0.99 程度まで得ることができる。しかし、2 次側の出力に交流(AC)電源の 2 倍周波数のリップルが発生しやすくなる。

2014 年 4 月 30 日
(記事中の情報はすべて掲載時点のものです)
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