◆POL コンバータ

POL(Point of Load)コンバータとは、マイクロプロセッサや DSP、FPGA、ASIC といった LSI のすぐ近くに配置する DC/DC コンバータのこと。日本語では、負荷端コンバータ、もしくは負荷点コンバータと表現されることが多い。

低電圧大電流化時代の寵児

POL コンバータは、比較的新しい存在だ。この名称が使われ始めたのは 2000 年ごろのことである。

なぜ、2000 年ごろになって登場したのか。その背景には、半導体製造の微細化の進展がある。微細化が進むとトランジスタの耐圧が下がるため、LSI の電源電圧を下げざるを得なくなる。LSI の電源電圧はかつて 5V だったが、その後、3.3V、2.5V へと徐々に低下し、2000 年ごろには 1V 台に突入した。しかも微細化が進展すると、一枚のシリコン・チップに集積できる機能が増える。言い換えれば、消費電流が増大するわけだ。すなわち 2000 年ごろに、電源電圧が低下すると同時に消費電流が増えるという「低電圧大電流化時代」が本格的に到来したことになる。

低電圧大電流化時代の到来は、電源回路設計に課題を突きつけた。プリント基板の端部に実装した DC/DC コンバータからその中央部に実装した LSI に電力を供給する従来の集中給電方法では、LSI が必要とする電圧値を正確に供給することが難しい。供給電流が増えたため、電源配線の抵抗成分による電圧降下(I2R)が無視できなくなってきたからである。しかも、電源電圧の低下によって正常に動作する電圧範囲が狭くなった。電源電圧範囲を示す値が ±10%だとしても、5V であれば ±500mV だが、1.0V の場合は ±100mV しかない。

このため、配線の抵抗成分による電圧降下に、負荷変動による電圧低下などが重なると、供給電圧が LSI の電源電圧範囲を下回ってしまう危険性が高まる。運悪く下回れば LSI の誤動作を招く。

さらに、電源配線が長くなると、そのインダクタンス成分の影響も無視できなくなる。例えば、LSI の動作状態が変わって供給電流が急激に変化した際に、大きな雑音が発生してしまう。この場合も、供給電圧が LSI の電源電圧範囲を超えて、誤動作を引き起こす危険性が高い。

プリント基板上の送配電工学

こうした課題に対応するために登場したのが POL コンバータだ。POL コンバータは、中間バス・アーキテクチャ(IBA:Intermediate Bus Architecture)と組み合わせて使うことが多い。このアーキテクチャは、プリント基板の端部に実装した DC/DC コンバータで比較的高い電圧(中間バス電圧)に変換してから、プリント基板上を配電するというもの。電力を送る際の電圧が高いため、供給電流が減る。その分だけ、電圧降下(I2R)分を小さく抑えられるわけだ。

そして LSI の近くに配置した POL コンバータで所望の電圧に変換して供給する。名前は POL コンバータだが、その中身は一般的な DC/DC コンバータと同じである。多くの場合、スイッチング・レギュレータが使われるが、出力電力が小さい用途では LDO レギュレータが用いられることもある。

エレクトロニクス業界は、POL コンバータと中間バス・アーキテクチャを組み合わせる分散給電方式を採用することで低電圧時代を乗り切った。ただし、この方法の登場によって、設計者は新しい課題に頭を悩ませられることになった。それは、「プリント基板上で効率的に電力を送配電するトポロジーは何か」という課題だ。

負荷の直近に個別に電源を配置する POL コンバータを使う分散型電源回路設計は、電源構成に選択肢が多く、中間レールの構成がポイントとなる。中間レールは電圧と電流がトレードオフの関係にあり、回路設計が複雑になる。

2014 年 4 月 30 日
(記事中の情報はすべて掲載時点のものです)
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