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  • 電源基板への入力電圧の印加時の注意点

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    電源基板への入力電圧の印加時の注意点 Part 2/2

    放電状態のセラミックコンデンサに、安定化電源の出力電圧をワイヤーで接続すると、セラミックコンデンサの低ESRにより充電電流による非常に大きなラッシュ電流が流れます。この結果、ワイヤーの持つインダクタンス成分とセラミックコンデンサの容量によるLC回路に大きな共振電圧振動が発生し、コンデンサ端子には電源電圧を超える高い電圧が発生し、耐圧オーバーにより製品にダメージを与える事があります。どのようにすれば高い電圧の発生を抑える事ができるでしょうか。

    2度目の電源投入では発生しない事が多い

    放電状態のセラコンに電圧を印加すると高い共振電圧が発生しました。では一度動作させてから、電源電入力の配線を脱着した場合はどうなるでしょう。一度電源が投入されて、電荷が蓄積されている入力コンデンサへの電源を外しても、セラミックコンデンサの自己放電は非常に小さいので、電荷が放電するのには時間がかかります。この為、短時間で入力電源のOFF./ONを繰り返しても残留している電荷により入力コンデンサへの突入電流の値が小さくなり、オーバーシュートは軽減されますので破壊に至りにくくなります。しかし、OFF状態で数時間放置し、入力コンデンサの電荷が抜けてしまってからONすると大きな突入電流が流れて過電圧による破壊が発生する可能性が出てきてしまいます。同じ評価を繰り返していても、OFFしている時間によって発生する電圧の大きさが変化するので、壊れたり壊れなかったりするという厄介な事象が発生する事になります。

    回避策はあるのか

    問題は配線の持つインダクタンスと入力コンデンサ(+前段の出力コンデンサ)が作るループでの共振による高電圧の発生が原因です。高電圧の発生は突入電流により配線のインダクタンスが保持するLI2/2のエネルギーによる昇圧動作に依るものなので、電源供給に使用する電線のインダクタンスを最小として配線のエネルギー蓄積量を減少させて共振電圧を小さくする方法がありますが、ワイヤー長を0にしない限り、平行線やツイスト線にしても共振を完全には抑えられません。(Part 1を参照)

    q6

    次に共振回路のQ値を考えます。共振回路ではQ値が高いほど共振により発生する電圧は高くなりますのでQ値を下げる工夫をしてみます。このLC回路のQ値が高いのは、電源ラインに使用したワイヤーの抵抗が低い事とセラコンのESRが低い結果、高いQ値となっています。しかし電線の抵抗は高くすると抵抗損が増加して効率が悪くなりますし、優れた特性を持つセラコンをタンタルコンや電解コンに戻したくはありません。電線とセラコンをそのままで、共振回路のQ値を下げる為に、セラコンに並列にESRの大きな電解コンやタンタルコンを並列に接続して、共振回路のQ値を下げてみます。
    図6の様に22uFのセラコンに47uFのタンタルコンを並列に追加して同じ実験を行ってみます。図7に示すように、コンデンサの総容量が3倍以上になった事により共振周波数は低下していますが、突入電流のピーク値は18Aに増加しています。しかし配線のインダクタンスとセラコンによる共振ループにESRの高いタンタルコンが入るためにQ値が低下して共振電圧のピークが 6.4Vに低下してそのまま電圧が低下して振動がないまま収束しています。タンタルコンの追加は共振をダンピングさせるのに非常に有効に働いている事が判ります。

    図7

    評価基板に実装されているタンタルコンデンサの例

    評価時に電源電圧の不用意な印加により製品が壊れてしまうのを予防する為に、図8のTPS62090評価基板の様に最初からタンタルコンを実装した状態で作られているものが多くなってきました。しかし、まだまだ入力にセラコンだけが実装されている評価基板が一般的ですから、これらの基板を評価する時は電源ケーブルと電源投入方法に注意を払う必要があります。評価を行う前に電源入力ピンにタンタルコンを追加しておくと安心ですし、試作基板を作る時にも電源入力部にタンタルコンを追加しておけば評価時に不用意に安定化電源を接続しても評価基板にダメージを与える事を防止できます。

    図8

    評価時に使用する安定化電源の注意点

    出力がアクティブな電源を接続することにより発生する問題ですが、安定化電源には出力のON/OFFスイッチが付いている製品が多くあります。この出力スイッチがOFFの状態で接続してからONにした場合、このスイッチが突入電流を制限する回路を持っている場合はソフトスタート動作となり、電流が制限され、共振による高電圧が発生するといったトラブルは発生しません。しかし、このスイッチが単なる機械的な接点による出力制御スイッチの場合はON操作により無制限な突入電流が発生します(安定化電源に過電流制限が付いていればその電流値で止まる可能性は有りますが、過電流制限回路の動作応答速度と出力部に内蔵されているコンデンサの容量により、瞬間的には電流は流れてしまいます)ので、使用する安定化電源の機種によってもトラブル発生の有無が決まる事もあります。

    より確実な保護回路

    ESRの高いコンデンサの並列追加により共振電圧のピーク値を下げる事には役立ちますが、安定化電源の出力電圧設定と安定化電源自体の過渡応答特性による出力電圧のオーバーシュートが発生する可能性を考えると、必ず耐圧未満の電圧になるという保証は有りません。より確実な保護回路としては、耐圧未満の電圧(Vz)のツェナーダイオードをVinラインに更に追加するなどのアクティブな電圧クランプ回路による保護回路を構成したほうがより安全と言う事になります。

    AC アダプタで動作する最終製品を設計する時の注意点

    高電圧の発生問題は評価基板だけで発生するのではなく、最終製品でも発生する事があります。ACアダプタでも動作する電池駆動機器の場合、通電状態のACアダプタを、電池が無い状態の機器にプラグインした場合、ACアダプタの出力が短絡状態となり、突入電流によるエネルギーと長い電線の持つインダクタンスより、共振が発生し、高電圧が発生する事があります。ACアダプタのジャック周辺を設計する時にはコンデンサにはセラコンだけではなく、ESRの大きなタンタルコンや電解コンを並列に追加しておくことにより、プラグを接続した瞬間に機器が破壊するという事態を回避できます。

    Part2 End

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