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    安定化電源やオシロなどの機器のアースの取り方により半田作業時に発生する問題

    ICを実装した回路基板を評価するとき、アナログ回路ではカットアンドトライによる部品の定数変更を行い特性のチューニングを行う事が有ります。このとき、基板への電源供給は停止していても、安定化電源やオシロスコープなどの機器の配線は接続されているままの状態で半田ごてを使用して部品の変更を行う事が良くあります。しかし、基板に接続されている機器のGNDの接続はどのようになっているでしょか。GNDの接続がちゃんとできていないと、思いもかけない高電圧をICに印加してしまい、最悪時にはICを破壊してしまうことが有ります。

    図 1 安定化電源などのラインフィルタ

    ラボで使用する作業台はICが静電気による破壊を起こさないようにアースが取られています。作業者もリストバンドを装着してアースを取り、人体に静電気を溜めないようにして作業を行います。これらのアースは静電気の帯電防止のために行われているので接地端子への接続は1MΩの抵抗を経由して接続されており、作業者が不用意に充電部に触ったときの感電を防止するようになっています。
    では、安定化電源やオシロスコープなどの機器のアースはどの様にしてとられているでしょうか。殆どの場合、AC入力ラインには図1のようなラインフィルタが入っています。電源ラインから入ってきたノイズはLCによるローパスフィルタによりフィルタリングされます。このラインフィルタのGNDはシャーシーGNDに接続されており、3芯の電源ケーブルにより3Pのアース付きコンセントに接続されています。このコンセントにより、シャーシーは大地に低抵抗で接地されてGND電位となります。(電源コンセントのアースは直流的には電線で地面に接地されていますが、その電線の総長は何mもあるので短波帯以上の高周波領域ではアースではなくアンテナになっている可能性は有ります。)各機器は3PコンセントのGNDピンにより相互に接続されるので各機器のシャーシーGNDは低抵抗で接続されて同電位になっています。

    図2 フローティング時の対地電圧

    安定化電源の出力の(-)端子はシャーシーGNDとは分離されていることが多く、電源出力の(-)を接地電位で使用する場合はショートバーでケースGND端子と接続するようになっています。フローティングGNDや負電源として使用する場合はこのショートバーを外すことによりフローティング出力で使用できます。しかしオシロスコープの場合、プローブのGNDはオシロスコープのシャーシーGNDに接続されているので、測定時にGNDフローティングで測定する場合は3P電源コードのGNDピンを3P-2Pアダプタを使用してアースから浮かすことによりフローティング測定ができます。
    まず、フローティング動作を行っている場合のケースGNDの対地電圧が何Vになっているかを考える必要が有ります。3PプラグのGNDピンが接地されていない場合、このケースGNDはAC 100Vをラインフィルタに内蔵された2個のコンデンサにより1/2に分圧された中点に接続されており、AC100Vのラインの片側(単相200Vのセンタータップ)は大地に接地されているので、この構成の場合、機器のケースGNDは対地電圧AC50Vによる電位変動を持った状態で動作させている事になります。


    図2 フローティング時の対地電圧

    この様なフローティング状態で、接地されたオシロスコープを使用し、プローブのGNDをこの回路に接続せずにケースGNDを測定するとAC50Vを観測する事が出来ます。回路の各点はAC50Vでシフトした電圧が測定されますが、オシロのプローブのGNDを回路に接続すると、ケースGNDとオシロのGNDが同電位となり、AC50Vのシフトは見えなくなります。オシロの接地が取られていない場合でも、プローブのGNDを接続した時点でオシロも同電位のフローティングGNDで動作するので、この場合も問題なく測定が出来ます。このように3P電源コードのGNDピンは機器のGND電位を決定する重要な働きをしますが、実際の使用においては結構ラフな使い方がされており、3P-2Pのプラグアダプタもあまり気にせずに使用されています。
    しかし、フローティングGND状態で構成されている機器に、接地された機器を接続する時には注意が必要です。たとえば、半田ごてです。昔の半田ごてのコテ先は絶縁されている事が多かったので、電源を入れたままの活線作業による機器の修理なども行えましたが(ラインの生産装置を止めないまま機器の修理を行うなど、今では考えられないような危険な作業を結構平気でやっていました)、最近の半田ごては3Pの電源ケーブルを使用し、コテ先はアースに直接接続されており、活線作業などを行うと接地短絡してしまいますこの為に、基板の部品定数変更の為に半田作業を行う場合安定化電源はOFFにして作業されますが、多くの場合、基板へのケーブル接続はそのままで作業されている事が多くあります。
    半田ごてをこれらの機器と同じテーブルタップに挿して使用する場合、コテ先は同じフローティングのGNDによる同電位となります。但し、安定化電源の出力がOFFでも、GNDなどのケーブルが接続されたまま半田作業を行うと、基盤に実装されたコンデンサの電荷を直接あるいは回路部品を経由してGNDに短絡する事になりますので、この点は注意が必要です。

    図2 フローティング時の対地電圧

    では、接地された半田ごてを使用してフローティング状態の基盤の部品を取り替えるとどうなるでしょうか。AC50Vの電位で浮いている基板の回路に接地された0Vの電位のコテ先を接続する事になります。ICの入力ピンが0Vに接地された結果、ICの入力ピンとGND間にAC50Vが印加される状態となります。ICが破壊されるかどうかはフィルタのコンデンサのインピーダンス、ICの耐圧とこのピン間に内蔵されたESD保護素子の耐性によりけりとなります。
    作業台のGNDの管理、特に3P-2Pアダプタの使用によるGND電位の管理には充分に注意を払っておかないと、ICにダメージを与えるかもしれない危険な作業を無意識のまま行ってしまっている可能性がある事になります。

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