WEBENCH® Series Voltage Reference Selector

性能を比較し、ADC に最適な電圧リファレンスを迅速に選択

WEBENCH® Series Voltage Reference Selectorは、 TI の A/D コンバータ(ADC)に最適な電圧リファレンスの選択を可能にする設計支援ツールです。 数百にものぼる組み合わせをソートする手順を簡素化し、最適なリファレンスを迅速に検索して複数の推奨オプションを一覧しながら比較できます。 WEBENCH® Reference Optimizer により、精度、ドリフト、ノイズ要件に基づいて、分析結果を簡単に再ソートできます。

3 ステップで簡単に電圧リファレンスを評価、比較

  • ADC を選択
  • マッチングする電圧リファレンスを選択
  • 精度や電力要件に基づき、オプションを比較

 
WEBENCH® Designer

 

各ステップの手順

WEBENCH® Series Reference Selector ツールは、A/D コンバータ(ADC)のリファレンス回路のための適切な部品を選定するツールです。 最初に、450 点以上ある TI の高精度 ADC リストから、使用する ADC を選択します(図 3)。 ADC を選択すると、電圧リファレンス・デバイスの候補リストが、リファレンス仕様のテーブル、誤差のサマリー、システムの消費電力とともに表示されます。 ユーザーはリストからリファレンス・デバイスを選択するか、設計の入力条件を変更できます。

設計の際は、ADC のアナログ入力とデジタル出力だけに、注意が向きがちです。 しかし、この 入出力ポートだけでなく、ADC の電圧リファレンス入力にも注意を払う必要があります。 図 1 は、ADC のリファレンス・ピンの駆動に使用できる簡単な回路図です。

図  1. 汎用電圧リファレンス- SAR 回路図

図 1. 汎用電圧リファレンス- SAR 回路図


図 1 の回路はすべての ADC には適用できないかもしれませんが、基本的な機能の理解は重要です。 図 1 では、電圧リファレンス・ブロックは ADC のリファレンス仕様ごとに出力電圧値を提供しています。 ADC のリファレンス・ピンの入出力で動的な電流スパイクが発生するため、通常、電圧リファレンス IC による ADC のリファレンス・ピンの直接駆動は不可能です。 電圧リファレンス・ブロックの後段には、ローパス・フィルタ(RREF_FLT と CREF_FLT)が配置されます。 このフィルタは、設計の際に電圧リファレンス ICの高周波出力ノイズ低減のために使用されます。 RREF_FLT の出力は、直接、バッファ・オペアンプを駆動します。 このアンプは、電圧リファレンスICをコンバータから「絶縁」するために使われます。 アンプの出力は、ADC のリファレンス入力と RBUF_FLT に接続され、後者はグランド用の CBUF_FLT と直列に接続されます。 RBUF_FLT は超低電荷で、通常、コンデンサの ESR 抵抗になります。 CBUF_FLT は、ADC の電圧リファレンス・ピンの入力に大きな電荷を供給します。 この回路構成は ADC への基準電圧を安定させ、変換の安定度をより向上します。 ADC を選択後、その ADC に適切な回路図が [WEBENCH Series Reference Selector] ページに表示されます(図 5)。

シリーズ電圧リファレンスの選定と分析は、2 ステップで行われます(図 2)。

図 2. 選択した ADC に適切なリファレンスを、2 ステップで選定

図 2. 選択した ADC に適切なリファレンスを、2 ステップで選定


ステップ 1: ADC を選択

[Select ADC] ビュー(図 3)では、ADC リストのソートに 4 つの方法があります。

  • TI の ADC 製品名でフィルタリング
  • 分解能(8 ~ 31 ビット)でフィルタリング
  • 車載グレードでフィルタリング
  • AVDD(1 ~ 11V)でフィルタリング
  • ADC リストをアルファベットの昇順/降順でソート(列見出しの "ADC" をクリック)

図 3. [Select ADC] ビューで、設計に使用する ADC のソートと選択が可能です

図 3. [Select ADC] ビューで、設計に使用する ADC のソートと選択が可能です。


  • 使用したい ADC の製品名がわかっている場合には、ADC の製品名を [Filter By ADC] ボックスに入力します。 下のテーブルに、選択結果が表示されます。 通常は外付けリファレンスを使用しない ADC の場合には、ツールは ADC に対応しておらず、選択したデバイスはこのテーブルに表示されません。
  • [Filter By Resolution] プルダウン・メニューにより、ADC リストを分解能別にソートできます。 選択した分解能を持つデバイスが、下のテーブルに表示されます。
  • 車載グレードのデバイスが必要な場合は、[Filter By Automotive Grade] セクションのボックスにチェックを入れます。 テーブルには、車載グレードの ADC だけがリストアップされます。
  • 電源電圧を基に ADC をソートしたい場合は、[Filter By AVDD] スライダーを使って電源電圧を指定します。 選択した電源電圧に対応するデバイスが、下のテーブルに表示されます。
  • テーブルに表示されている ADC は、アルファベットの昇順/降順でソートできます。

関心のある ADC があれば、[Select] ボタン(図 4)をクリックします。 注: [ADC] 列の特定の製品をクリックすると、その製品フォルダにアクセスできます。

図 4. 関心のある ADC を選択し、[Select] ボタンをクリックすると、[WEBENCH Series Reference Selector] ページに移動します。

図 4. 関心のある ADC を選択し、[Select] ボタンをクリックすると、
[WEBENCH Series Reference Selector] ページに移動します。


[Select] をクリックすると、電圧リファレンスを選択するウィンドウが開きます。


ステップ 2: Series Reference Selector

図 5 - [WEBENCH Series Voltage Reference Selector] ビュー

図 5. [WEBENCH Series Voltage Reference Selector] ビュー


電圧リファレンス選択ウィンドウ(図 5)には、8 つの領域があります。

  1. 選択した ADC の情報(図 5、領域 1)
    選択されたリファレンス
    この領域には、前のステップで選択した ADC のプロパティが表示されます。 選択した ADC をクリックすると、その製品のデータシートに移動します。 ショッピングカートのアイコンから、無償サンプルを注文できます。

  2. ADC 選択 の変更(図 5、領域 2)
    ADC を変更する場合には、[Choose Another ADC] ボタンをクリックすると、[Select ADC] ビューに戻り、別の ADC を選択できます。

  3. システム・パラメータ(図 5、領域 3)
    Automotive References のボックスにチェックを入れると、車載グレードのリファレンスを表示できます。 (車載グレードの ADC を選択している場合は、デフォルトでこのボックスにチェックが入っています。) システムの動作温度範囲は、デフォルトで 20 ~ 70C に設定されています。 利用可能な電圧リファレンス・デバイスをすべて表示するために、個々のデバイスの動作温度範囲ではなく、上記の温度範囲が設定されています。 実際の設計に適した温度に値を変更できます。 電圧リファレンスの精度は動作温度範囲の影響を受けるため、温度選択の際は十分にご注意ください。

    [Alternate Reference] の値は、選択したコンバータに最適な電圧リファレンスに従って設定されています。 実際のアプリケーションの要件に応じて、これよりも低い値のリファレンスをプルダウン・メニューから選択できます。

  4. 仕様に基づくシリーズ・リファレンスのテーブル(図 5、領域 4)
    ADC の技術仕様に基づき、ADC の推奨シリーズ電圧リファレンス IC が右側の表に表示されます(図 5、領域 2)。 選択する場合、[Alternate References] プルダウン・メニューから、より低い値の電圧リファレンスを選択できます。 [Alternate References] プルダウン・メニューで値を選択すると、選択内容に応じて、別の電圧リファレンスのテーブルが表示されます。

    このテーブルには、上記の選択基準(電圧リファレンスの電圧と動作温度範囲)に基づき、利用可能な電圧リファレンス・デバイスのリストが表示されます。。 このリストには、利用可能なすべての電圧リファレンスが、対応パラメータとともに表示されます。 テーブルの左列には、選択ボックスが表示されます。 最大 5 種類の電圧リファレンス・デバイスを選択し、テーブルの下の [Compare Up to 5 Parts] をクリックすると、比較レポートが生成されます。 比較レポートでは、リファレンスの精度や消費電力の違いが一目でわかる棒グラフで表示されます(図 8)。

  5. WEBENCH Reference Optimizerオプティマイザ・ダイヤル(図 5、領域 5)
    このダイヤルを使用すると、次の 3 つの基準に基づき、利用可能な電圧リファレンス・リストをソートできます。
    • 初期精度
    • 電圧ノイズ
    • 温度ドリフト
    ダイヤルを変更すれば、電圧リファレンス部品リストでデバイスのランキングが変更されるだけです。いかなる部品も除外されないことから、ユーザーはさらに評価を続けることが可能です。

    以下のグラフ(図 6)は、以下の 3 つの基準の重み関数 を示しています。 横軸はダイヤルの 5 つのメモリを示します。 縦軸は各基準の相対的な重みを示します。

図 6. オプティマイザ・ダイヤルの重み付けアルゴリズム

図 6. オプティマイザ・ダイヤルの重み付けアルゴリズム


  1. 選択された電圧リファレンスの表示(図 5、領域 6)
    選択されたリファレンス
    この領域には、電圧リファレンスのテーブルで選択された電圧リファレンスが表示されます。 製品名をクリックすると製品フォルダに移動でき、ショッピングカートをクリックすると無償サンプルを注文できます。

  2. ADC – 電圧リファレンスのアーキテクチャ(図 5、領域 7)
    この領域には選択された ADC に対応する回路図が表示されます。 ほとんどの場合、SAR アーキテクチャが使用されています(図 1 参照)。 ただし、ADS1258 など、別の方式を採用している ADC もあります(図 7)。

図 7. 電圧リファレンスと デルタ-シグマ ADC の回路図

図 7. 電圧リファレンスとデルタ-シグマ ADC の回路図

誤差のサマリー
  1. 誤差のサマリー(図 5、領域 8)
    この領域には、電圧リファレンスのテーブルで選択された電圧リファレンスの精度が表示されます。 適用される電圧リファレンスに基づく ADC の [LSB size] は、リストで最初の仕様として表示されます。 [Reference Error] には、この誤差がミリボルト(mV)、ADC LSB、フルスケール・レンジに対する ADC の % の形で表示されます。 [Reference Error After Calibration] は、リファレンスの誤差から室温誤差を差し引いたものです。


誤差分析ウィンドウ

図 8 のビューでは、電圧リファレンスの誤差をミリボルト(mV)、ADC の LSB(LSB)、フルスケール・レンジに対する ADC のパーセンテージ(%FS)の各単位で比較できます。 選択した単位に応じて、仕様を表示したテーブルと下のグラフの内容が変化します。

  • mV ➝ ミリボルト (絶対値)
  • LSB: 電圧リファレンスと ADC の分解能によって決まる ADC の最小有効ビット・サイズ
  • FS: ADC フルスケール・レンジ

図 8. 誤差レポート・ビュー

図 8. 誤差レポート・ビュー


まとめ

WEBENCH Series Reference Selector ツールは、回路に最適なシリーズ電圧リファレンスの選択を容易にします。 450 点以上ある TI の高精度 ADC のリストから ADC を選択すると、候補となる電圧リファレンス・デバイスのリストが、リファレンスの仕様のテーブルとともに表示されます。 ユーザーは任意のリファレンス・デバイスを選択するか、要件に合わせて設計を変更できます。



主なパラメータと単位の用語解説

AVDD: ADC とリファレンスの正電源電圧

ADC: A/D コンバータ

ADC 分解能: コンバータの分解能はコンバータの出力ピンのディスクリート・ビット数を示します。

LSB サイズ: ADC の最小有効ビット(least significant bit)。ADC の分解能に対する基準電圧の比を示します。→ LSB = Vref / 2N で求められます。ここで、Vref は電圧リファレンス・デバイスの出力電圧、N は ADC ビット数です。

SAR: 逐次比較型レジスタ(SAR)A/D コンバータ(ADC)は、分解能が中レベルから高レベルの ADC 市場で大きなシェアを占めています。

温度範囲:各デバイスは特定の動作温度範囲を持っています。 システムの許容動作温度範囲は、通常、(電子基盤上のすべての部品が同じ温度条件下に置かれると想定して)温度範囲が最も狭いデバイスによって決まります。

Vref: 電圧リファレンス・デバイスの出力電圧 Vref という語は、電圧リファレンス・デバイスの標準的な略語としても使用されます。


参考資料

2014 年 6 月 9 日