TI の InstaSPIN™ モーター制御ソリューション

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速度ゼロと低速

動作範囲全体にわたるセンサレス制御

センサレス制御は当初、動作時間の大半が高周波動作(機械的速度)であるアプリケーションに適用されていました。 この主な理由は、ほとんどのセンサレス・オブザーバが、最小の周波数で回転している回転子によって生成される逆起電力信号を必要とすることです。 FAST を使用する場合は、この最小動作周波数は他のオブザーバを使用する場合よりかなり低くなり、時には 1Hz 未満まで低下します。 しかし、依然として最小周波数での動作が必要です。

「動作時間の大半が高周波動作」であるアプリケーションの多くでは、回転子の速度をオブザーバが動作を開始するのに十分な速さにするスタートアップ・シーケンスを実際のアプリケーションでも設定可能です。 InstaSPIN-FOC では、これを「強制された角度」機能と呼びます。 回転子フラックスの実際の位置は不明なので、単純に固定子の磁界を回転させ、回転子が追従するようにします。 負荷にとって十分なトルクが生成され、オブザーバが良好な推定値の生成を開始するための十分な速度に達した時点で、すべてが予定どおりに動作することになります。

動作範囲のグラフ

この手法には、以下のような欠点があります。

  • 固定子フラックスが軽く逆方向に動作するときに、回転子は最初、逆方向へわずかに移動するおそれがあります
  • 固定子フラックスが両方向に回転する場合、回転子がそれを捕捉しないまま、回転子が両方向に移動するおそれがあり、特に負荷に対して固定子フラックスの大きさが十分ではない場合は、このような動作が発生するおそれがあります
  • 最大トルクを保証できません
  • 負荷の変動が原因で、同期が容易に失われるおそれがあります

回転子フラックスの角度をすぐに高精度で確認できることが FAST の明確な利点であり、この精度が低下するほど、理想的な動作領域から遠ざかります。 こうした傾向は問題となります。保証された起動方向、なめらかな動作、トルクの生成量、負荷が変動する状況での制御の安定性を必要とするアプリケーションでは、特に問題が大きくなります。

速度ゼロや低速でのセンサレス動作が利点になるアプリケーションの例は、以下のとおりです。

  • 牽引
    • 電動スクーター、電動自転車、電動アシスト自転車(Pedelec)
    • カート、全地形対応車、フォークリフト、農耕機器/芝刈り機
    • ロボット
  • 工具
    • ドリル、ドライバー、トルクレンチ、電動のこぎり
  • コンプレッサ
    • なめらかで制御された起動による動作寿命の延長
  • ファンとポンプ
    • 非常になめらかな起動を必要とする送風機器
    • IPD(初期の位置検出)より早期に最高速度に達する可能性がある高速回転ファン/ターボ

上記の問題を真に解決するには、速度ゼロや非常に低速で動作している時点で回転子フラックスの角度を継続的に推定できることが必要です。さらに、低速オブザーバと高速オブザーバの間での切り替えを安定した方法で実行できることも必要です。 こうした必要性に対応するため一連のライブラリが、InstaSPIN-FOC とともに用意されています。 このライブラリは、2 つのパートで構成されています。

  • IPD_HFI: 初期の位置検出、およびゼロ速度と低速での動作に対応する高周波注入(High Frequency Injection、HFI)
  • AFSEL: IPD_HFI と FAST の間でのロジック切り替え
速度ゼロ

 

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初期(速度ゼロ)の位置検出

IPD_HFI モジュールの IPD 部分は、固定子コイルを取り囲む鉄の BH 曲線を使用して、回転子の N 極、したがって d 軸を判定します。 以下の図に示すように、磁界の強さは BH 曲線の動作ポイントにバイアスを加える結果になります。 固定子コイルによって、正磁界と反磁界が印加されます。 磁界が両方とも正になった時点で、BH 曲線は飽和へと押し出されます。 磁界が反対になった時点で、BH 曲線の動作ポイントはリニア領域に向かって移動します。 BH 曲線のこれら 2 つの動作ポイントの間でのインダクタンスの違いに基づいて、IPD アルゴリズムは回転子の N 極がどこに配置されているかを判定します。

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低速での位置検出

回転子の N 極の位置を判定した後、モーターが回転している間、N 極の動きを常に追跡する必要があります。 IPD_HFI ソリューションでは高周波信号を使用して N 極を追跡します。 ただし、この機能は、モーターの設計で大きな突起が設けられていることを前提としています。 突起を導入するために、両極の間に残っている回転子の鉄の隙間を使用して、回転子の表面より下に回転子の磁石を配置します。 この構造を、突起のない表面を採用した設計と比較してください。

突起ありと突起なし

突起ありのタイプでは、周囲を取り囲む鉄に比べて磁気材料の相対透磁率がかなり小さいので、 フラックスが磁石の周辺に位置しているときの磁気抵抗の差は、鉄の経路での磁気抵抗より大きくなります。 回転子の角度が進むにつれて、磁気抵抗は周期的に変動します。 固定子コイルの地点でインダクタンス L を測定すると、以下のようになります。

L のピーク

IPD_HFI の HFI 部分ではこの情報を活用して、回転子が低速で回転している間に回転子の N 極を継続的に捕捉します。 回転子の角度として、S 極のピークではなく N 極を確実に捕捉できるように、IPD の位置を使用し、D 軸の N 極を初期値として HFI を初期化します。 このシグネチャを励磁するために使用する高周波信号は、モーターの時定数に基づいて選択するものです。

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切り替えロジック

HFI アルゴリズムは低速時は非常に良好に機能しますが、最大速度制限があります。 この最大速度制限に達する前に、FAST のような高速オブザーバに制御を切り替える必要があります。 低速(HFI)推定機能と高速(FAST)推定機能のどちらかを選択するモジュールは、AFSEL(Angle Frequency Select、角周波数選択)です。 AFSEL では、低速推定機能と高速推定機能の両方から入力される角度と周波数、および一方の推定機能からもう一方の推定機能に制御を渡すときの速度が必要です。

FAST
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制約

突起ありのモーター設計が必要とされることに加え、主な制約の 1 つとして、モーターの突起部分を流れる電流による効果が生じることが挙げられます。 負荷がかかっているモーターを起動するには、必要なトルクを生成するために、モーターで十分な電流を消費する必要があります。 電流が増加するにつれて、磁気抵抗の変動は減少するので、インダクタンスの変動も減少し、HFI 部分はトルク生成を最大化するための十分な精度を維持して角位置を推定することができなくなります。 この点はテストする必要があり、モーターの設計と初期の突起(変動)によっても大きく左右されます。 いつでも、それが大きい方が、良い結果につながります。

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実装例

「Torque Control」の実装は、MotorWare revision 1.00.01.14(英語)以降の「proj_lab21」で公開されるようになりました。

当初、このプロジェクトでは、F28069M コントローラと DRV8301 Rev D EVM インバータの組み合わせのみが公開されています。 TI で追加のプロジェクトは予定されておりませんが、この分野におけるアルゴリズムは日々発展しているため、経験ある開発者により機能が追加されていくと考えています。

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InstaSPIN 設計リソース