JAJA505E december   2016  – april 2023 INA240 , INA240-Q1 , INA240-SEP , INA253 , INA253-Q1 , INA254 , INA296A , INA296B , LMP8481 , LMP8481-Q1 , LMP8601 , LMP8601-Q1 , LMP8602 , LMP8602-Q1 , LMP8603 , LMP8603-Q1

 

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システムの電力要件を満たすために、多くの種類のスイッチング電源トポロジを利用可能です。DC/DC スイッチング・コンバータを使用すると、高電圧の DC レールを低い電圧の DC レールに降圧できます。これらのコンバータのアーキテクチャには、降圧、昇圧、降圧-昇圧、フライバックの各トポロジがあります。DC/AC スイッチング・コンバータは、DC 入力電圧を AC 出力電圧に変換します。

名前が示すように、スイッチング・コンバータには、各種のスイッチ、トランジスタ / FET、ダイオードなどが含まれ、入力電圧を目的の出力電圧へ、高いシステム効率で変換するために使用されます。これらのコンバータはその性質上スイッチングを行うため、電流波形を正確に測定することは困難です。電流センシング・アンプを選択するときは、電圧ノードの要件、システム制御の要求、測定のドリフトについて考慮する必要があります。

電圧ノードへの要求

回路のアーキテクチャに含まれる各ノードは、それぞれコモン・モード電圧と動作が異なっています。場所によって、電流の測定の性質も異なり、測定回路ではその点を考慮する必要があります。バック / 降圧型コンバータの各種ノードを、図 1 に示します。この回路は、ハーフ H-ブリッジの出力段と、インダクタとコンデンサによるローパス・フィルタとで構成される基本的な回路を示しています。制御回路、出力段ドライバ、負荷はこの図には示されていません。

GUID-0CF71A91-9BFB-421F-9E06-0D926721048D-low.gif図 1 DC/DC スイッチング電源 – 降圧アーキテクチャ

ノード 1 電圧は、コンバータの入力電源に結線されています。コンバータは、この高電圧を、より低い出力電圧に降圧します。このノードでの電流測定は、ハーフ H-ブリッジのハイサイド・デバイスを通過する電流を測定することになり、主にコンパレータでの過電流や短絡の検出に使用されます。このノードで行われるすべての測定には、微小差動電圧を測定する性能を備えた高コモン・モード回路が必要です。

ノード 2 はハーフ H-ブリッジの中間点で、スイッチング電源の基礎となっているパルス幅変調 (PWM) 信号が示されます。この場所での電流測定は、システム制御および過電流や短絡を検出するためのインダクタ電流を示します。その電圧は、適切な出力電圧を生成するように平均化される PWM 比率で高電圧とグランド (または負電源) の間を遷移します。ノード 2 電圧には急速なコモン・モード遷移が存在するため、測定においては桁数の違う遷移電圧を処理し、出力波形の過渡を抑制できることが必要です。

ノード 3 電圧はコンバータの出力電圧で、この DC 電圧レベルには、オシロスコープで観察すると小さな電圧リップルが存在します。この場所での測定の要件はノード 1 とほぼ同じで、システム制御および過電流や短絡の検出用のインダクタ電流が得られます。ノード 3 電圧はノード 1 よりも小さいですが、必要な出力電圧レベルの関係から、測定回路には依然として高いコモン・モード電圧を処理する能力が要求される場合があります。

ノード 4 電圧は、回路のグランドに結線されます。このノードで検出されるのはグランドに近い低電圧のコモン・モード・レベルなので、この場所での測定については、既に述べた他の場所ほど高い要件は必要とされません。

その他の DC/DC スイッチング・アーキテクチャでも、各ノードがコンバータ回路内の異なる位置にある場合がありますが、前述のノードと同様の挙動を示します。

測定ドリフト係数の要件

スイッチング電源は高効率で電圧レベルを変換する回路ですが、それでも変換での電力損失は発生します。これらの電力損失はシステムの効率性の損失で、熱が発生する原因となります。コンバータの電力レベルによっては、大きな熱源となる可能性があります。

INA240 は熱ドリフト係数の小さい仕様なので、熱が発生しても電流測定値は大きく変化しません。熱の発生をさらに抑えるため、INA240 は各種のゲインのバージョンがあり、電流センシング抵抗の値を減らすことができます。従来のアンプでは、アンプのゲインが増大するにつれて、パフォーマンスが大きく低下します。これに対して、INA240 はどのゲインのバージョンも優れた電気的特性を持ち、各種ゲインのバリエーションにわたって高いパフォーマンス・レベルを実現しています。それぞれのゲインについて、消費電力の比較を 表 1 に示します。

表 1 消費電力の要約 (1)
パラメータ ゲイン
20V/V 100V/V 200V/V
入力電圧 (mV) 150 30 15
RSENSE (mΩ) 15 3 1.5
消費電力 (W) 1.5 0.30 0.15
フルスケール出力電圧=3V、測定電流=10A

システム制御および監視の要件

ほとんどのスイッチング電源は、よく制御された電力を供給するため、閉帰還システムを採用しています。最適化されたフィードバック制御を行うため、高精度の測定が求められます。アンプのオフセットやゲイン誤差などの仕様は、制御システムのレギュレーション能力に大きな影響を及ぼす可能性があります。システムの要件と、回路に要求される複雑性に応じて、異なるフィードバック方式が使用されます。また、最終機器の各種動作モード中の消費電力を設計が最適化および報告するようになるにつれ、システムの電力を監視する要求が高まっています。

電圧モード・フィードバックは、出力電圧をスケーリングさせてから、基準電圧と比較し、誤差電圧を取得します。このフィードバック方式は比較的簡単ですが、調整を行う前に出力電圧の変化を許容する必要があるため、フィードバックが低速になります。電圧モード・フィードバック用の電流測定は一般に、負荷電流を監視し、短絡が発生しているかどうかを判断します。電圧モード・フィードバック・コンバータにおいて最も重要な電流アンプの条件は、コンバータのコモン・モード出力電圧です。これらのコンバータの出力電圧は、マイクロプロセッサや低電圧デジタル回路用の低い電圧 (1.8V~5V) から、48V やそれ以上のシステム用の高電圧までの範囲にわたります。出力波形には、フィルタ後でもノイズや過渡が含まれている可能性があり、測定の妨害やエラーの原因となる可能性があります。

電流モード・フィードバックでは、システム電流を活用するフィードバック・ループが制御システムに追加されます。一般には、コンバータでのインダクタ電流が使用されます (図 2 を参照)。これによって、内部ループは電圧フィードバック・ループと並列に、はるかに高速に実行されます。一般に、電流モード・フィードバックの欠点の 1 つは、信号のノイズや過渡への感受性が高いことです。

GUID-03EAA551-014E-4436-A5A7-9DB5BAB2EE8B-low.gif図 2 電源制御フィードバック用の電流センシング

電流モード・フィードバックは一般に、ピーク電流モード制御と、平均電流モード制御に分けられます。ピーク電流モード制御では、インダクタの電流を直接活用するため、信号のノイズや過渡がフィードバック・ループの乱れを引き起こします。INA240 は高い CMRR を持つように設計されているため、入力信号が原因で発生する可能性のある乱れやノイズを減衰するため役立ちます。

その他の推奨デバイス

システムによっては、別のデバイスを利用して、必要な性能と機能を実現可能です。INA240 よりも低い性能レベルを必要とするアプリケーションには、より高いコモン・モード入力範囲を持つ INA296B を、双方向の電流測定を必要としないアプリケーションには INA290 を使用します。INA253INA254 にはシャント抵抗が内蔵されており、調整されたシステム・アプローチを実現できます。

表 2 その他の推奨デバイス
デバイス 最適化されるパラメータ 性能のトレードオフ
INA253 内蔵低誘導性シャント:2mΩ、PWM 除去 TA = 85℃で ±15A
INA254 内蔵低誘導性シャント:400μΩ、PWM 除去 TA = 85℃で ±50A
INA296B 双方向、広いコモン・モード入力範囲、小型 SOT-23 エンハンスド PWM 除去機能なし
INA290

単方向、最大 120V

エンハンスド PWM 除去機能なし